みんなのマイミュージアム 大原美術館 可能性を模索する数々の取り組みが、未来を拓く礎になる。

Chapter3 可能性を模索する数々の取り組みが、
未来を拓く礎になる。

 これからの未来を見据え、大原美術館では様々な取り組みを開始しています。たとえば、「百年愛された銀行建築を児島虎次郎館へ再生するプロジェクト」もそのひとつ。この銀行建築は、孫三郎が 1922(大正 11)年、第一合同銀行倉敷支店として建設したもので、設計は大原美術館の本館も手掛けた薬師寺主計(やくしじかずえ)。その後、中国銀行が支店などとして活用していましたが、2016(平成 28)年 に大原美術館に寄贈されました。一方、倉敷アイビースクエア内の建物を改築した児島虎次郎記念館が、施設の老朽化に伴い2017(平成29)年、45年の歴史に幕を閉じました。「ここにかつての児島虎次郎記念館を再現することは、大原美術館として意義がある」と考え、このプロジェクトが発足したのです。銀行の建設から100年の節目を数える2022(令和4)年に向けて、2021(令和3)年10月1日に暫定オープンを果たし、ヤノベケンジ《サン・シスター(リバース)》の展示、ならびにOHARA MUSEUM SHOPを期間限定で設置。グランドオープン時(未定)には、虎次郎の作品や彼が収集したエジプト・西アジア他の古美術を展示するそうで、さらにはそれらの調査・研究・修復にも注力。「研究を通じて作品の新しい知見を伝えることも美術館としての使命です。ゆくゆくは、研究者やアーティストが集まるサロンのような小さな研究所の役割を果たせたら」と大原さんは話します。

ヤノベケンジ『サン・シスター(リバース)』1
OHARA MUSEUM SHOP2
  1. 1ヤノベケンジ《サン・シスター(リバース)》
  2. 2OHARA MUSEUM SHOP

 また、2021(令和3)年からオンラインツアーもスタートさせました。「開設の一番のきっかけは、コロナウイルスによる長期休館でした。お客様と作品が出会う機会を美術館側が閉じてしまった。そのことが、どうしても引っ掛かって」と話すのは、オンラインツアーを企画・運営する業務推進課の岡崎翔太さん。映像と画像を事前に編集したものに、岡崎さんがライブで解説を加えるスタイルが特徴で、今までに約70人が参加したといいます。
 美術館に来られない人たちに魅力を届けるため、特にこだわったのが「臨場感」です。入口から出口まで実際の鑑賞ルートを再現するため、廊下や階段といった場所もあえて編集で残してリアルさを追求。「この階段がある場所は元屋外。建物を増築してできた空間なんです」といったバックヤードに潜む「実は…」な話を盛り込むことで特別感を散りばめています。

業務推進課 岡崎翔太さん
「臨場感」にこだわったオンラインツアー
廊下や階段といった場所もあえて編集で残してリアルさを追求。
オンラインツアーは今までに約70人が参加

 また、オンラインだからこそ可能な「作品への接写」も特徴で、筆の動き、絵の具の厚みといった臨場感あふれる作品の表情をつぶさに発信。さらに関連作品との比較画像を差し込めることで、より深く作品鑑賞が楽しめるような工夫も施しました。オンラインツアーに参加した人の反応は「行きたくなった!」という声が多く、「それは意味を返すと、実際に美術館に来る方たちの期待感を高める側面も担うと思うのです。また、作品を見るためには、今まではお客様に来館していただくという選択肢しかありませんでしたが、オンラインツアーを通じて美術館から届けるという選択肢が1つ増えた。オンラインツアーで収益を賄うには及びませんが、未来への種まきとして大きな意味があることだと思うのです」。

オンラインだからこそ可能な「作品への接写」
筆の動き、絵の具の厚みといった臨場感あふれる作品の表情

 さらに岡崎さんは、オンラインツアーだけでなく他の企画も温めているといいます。「美術館という“点”ではなく、倉敷美観地区という“面”で広げていけないかと考えています。大原家とゆかりの深いモノ・コトが多く、歴史探訪や建築めぐりなど、様々な広がりが期待できるのではないかと感じています」。その言葉どおり、旧大原家住宅の一部を開放した「語らい座 大原本邸」、孫三郎が社長を務めた倉敷紡績所の工場跡地を複合文化施設として再生した「倉敷アイビースクエア」とゆかりの施設は数多く、民藝運動に共鳴した孫三郎と息子・總一郎によってこの地に根差した民藝の施設や品々も倉敷の大きな財産。美術館としての枠を超えた活動の広がりを模索しています。

児島虎次郎『和服を着たベルギーの少女』と岡崎さん
語らい座 大原本邸3
倉敷アイビースクエア4
エル・グレコ『受胎告知』と岡崎さん
  1. 3語らい座 大原本邸
  2. 4倉敷アイビースクエア

 最後に大原さんにアートの力について尋ねると、「アートというのは、生きようとする力を応援するものだと思うのです。例えば、絵を見て美しいと感じる。そういう気持ちが芽生えることで、『明日もう一日生きてみよう』という思いを照らす光になるかもしれない。私たち美術館には、名画や作品を通じてその力を応援することができる。『もう一度頑張ってみよう』。そう湧き上がる気持ちを応援するのが、アートの持つ力だと思うのです」。そう力強く答えてくれました。

私たち美術館は名画や作品を通じて生きようとする力を応援することができる。
アートの力について語る大原さん

大原美術館

大原美術館
所在地
岡山県倉敷市中央1-1-15
TEL
086-422-0005
FAX
086-427-3677
URL
https://www.ohara.or.jp/

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  • 特集vol.50 クラシキ インスタ映えスポット
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