特集45 日本初の民間天文台 倉敷天文台 「誰もが利用できる天文台を」と設立された日本初の民間天文台 特集45 日本初の民間天文台 倉敷天文台 「誰もが利用できる天文台を」と設立された日本初の民間天文台

Chapter2 「誰もが利用できる天文台を」と設立された
日本初の民間天文台

 大正時代、全国に国立の天文台はありましたが、いずれも限られた研究者しか利用できませんでした。そんな中、京都大学の天文学者・山本一清博士や岡山出身のアマチュア天文家・水野千里さんが、「気象条件のいい岡山に、誰もが利用できる天文台を作ろう」と提唱しました。
 「曽祖父の原澄治は水野さんと親友だったこともあり、熱い思いに応えようと資金を用意したようです。土地を提供したのは、実業家の大原孫三郎さん。リスクを負わないようにしようと考える人が多い今の日本からすると、あの頃は大原さんや澄治に限らず多くの人が、人のために、みんなに喜んでもらうためにと損得抜きで力を注いでいた、すごい時代だったと思います」と原さん。

本田實さんと原澄治さん
倉敷天文台講習会記念写真
当時の倉敷天文台
当時の倉敷天文台

 そうして1926年11月21日、スライディングルーフ観測室に、当時としては国内最大級の口径32cm反射望遠鏡を設置した「倉敷天文台」が完成したのです。「広く一般の人に星を見てもらおう」と無料開放していましたが、1949年に観測室が海上保安本部笠岡水路観測所の倉敷分室となったため、一般の人の立ち入りができなくなりました。そこで新設したのがドーム型の観測室。現在は『原澄治・本田實記念館』となっています。星の世界は2013年に建てたスカイルーフの観望室で楽しめます。
 1966年に海上保安庁から返還されたスライディングルーフ観測室は、非常に珍しい構造から2001年に国の登録有形文化財となりました。本田實生誕100年となる2013年に倉敷市が譲り受け、「ライフパーク倉敷」に移築・復元を行いました。

観望室
観望室
観望室外観1
旧倉敷天文台スライディングルーフ観測室(ライフパーク倉敷内)2
  1. 1観望室外観
  2. 2旧倉敷天文台スライディングルーフ観測室(ライフパーク倉敷内)

 毎週火曜日から木曜日に開館している記念館では、本田實さんが愛用した観測機や星の写真の撮影フィルム、新彗星や新星の発見によって贈られた多数のメダルのほか、天文台設立時にイギリスから購入した反射望遠鏡や設立者である原澄治にまつわる品々も見ることができます。

口径28mmのレンズ
原澄治・本田實記念館
原澄治・本田實記念館
多数のメダル
反射望遠鏡

COLUMN 原澄治と本田實

原 澄治さん

原 澄治1878年7月23日 - 1968年1月4日
 実業家として、倉敷紡績(クラボウ)専務、中国民報社(現在の山陽新聞社)役員を務め、大原孫三郎の右腕として実業界で活躍。1945年に辞任するまで系列の奨農土地会長、倉敷絹織(現在のクラレ)取締役、中国信託社長、岡山合同貯蓄銀行頭取、中国銀行取締役などを兼任した。また1912年から郡議、町議を歴任し、1918年から1924年までは倉敷町長を務めた。
 1926年、日本初の民間天文台「倉敷天文台」を私財を投じて設立。当時、国内最大級だった中古の口径32cm反射望遠鏡(市指定重要文化財)をイギリスから輸入した。当時の日本の既設天文台はすべて官営で、限られた研究者しか使えなかったが、倉敷天文台は利用者の所属を問わない、いわば公開天文台とし、天文学の発展・普及に貢献した。倉敷市名誉市民。

本田 實さん

本田 實1913年2月26日 - 1990年8月26日
 世界を代表する日本のアマチュア天文家で、生涯に新彗星12個、新星11個を発見し、「天体発見王」とも呼ばれた。長年、倉敷天文台の主事を務めた。
 10歳で星空の美しさに目覚め、小遣いを貯めて口径28mmのレンズを購入。17歳のときに32倍の屈折望遠鏡を自作して下弦の月を見たのが、望遠鏡による初めての天体観測となった。またその頃、東京天文台の天文学者・神田茂著『彗星の話』を読んで彗星発見を決意。その後天体観測に生涯を捧げ、77歳のとき、倉敷天文台内で観測データの整理中に永眠した。
 一方で、倉敷天文台で子どもたちに星を見る楽しさを教えたり、書や詩歌をたしなみ、星や宇宙に関する美しい詩歌を数多く遺すなど、探究心の強さや魅力的な生き様が天文愛好家だけでなく多くの人々に影響を与えている。倉敷市名誉市民。

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