公開日2017/10/3
公開日2017/10/3
倉敷FSCの氷上での練習は、毎日午後6時からの2時間。屋外でのストレッチで体をほぐしたクラブ生たちが次々と滑り出すと、一般営業を終えて静まりかえっていたリンクはにわかに活気づきます。滑り方の基本を習う初心者グループ、黙々とスピンを繰り返す中・高校生、懸命に一回転ジャンプに挑戦する小さな子たち…。コーチや先輩の指導を受けて練習するクラブ生のまなざしは、真剣そのものです。
「私は、技術的なものは基本しか教えません。基本に忠実にということです。だから、例えばリンクを100周滑るとか、10分間勢いよく滑り続けるといった、一番地味で一番退屈な、毎日積み重ねないといけない練習を大切にしています。フィギュアスケートって最後はひとりで勝負する競技だけど、練習の時は全体やグループで、お互いに『がんばろうね』って言いながら一緒にやることで、つらさを半分にして積み重ねていけるのです」と佐々木監督。
高橋大輔さんや平井絵己さん、田中刑事選手らも、そうして基礎を確実に身につけることができたからこそ、ハイレベルな技術を提供してくれる先生やコーチの下へと巣立ち、世界へと羽ばたくことができたのではないでしょうか。
「全国で通年営業しているリンクは30ほどしかないんですよ」と佐々木監督。かつて高橋さんが通っていた頃、このリンクは冬季だけ営業していたため、それ以外の期間は練習場所をほかに求めていたのだそう。「貸切の枠が夜中の2時や3時ということもありましたが、滑るためには行かなければならなかった」。それは、一般営業の時間帯ではジャンプやスピンなどの練習が規制されることが多いため、早朝や深夜でなければ本格的な練習ができないというフィギュアスケートの厳しい練習事情があったから。実は日本では、トップスケーターでさえ練習場所の確保に苦労している人が多いのだそう。だからこそ、毎日、伸び伸びと滑ることができるようになった今の倉敷は、「フィギュアスケーターにとって最高の練習環境が整っている」のだと佐々木監督は言います。