公開日2020/04/1
公開日2020/04/1
倉敷市中心部から南に約30kmの倉敷市児島地区。かつて瀬戸内海に浮かぶ島だったこの地は、江戸時代の干拓によって陸続きとなったのだそう。先人たちは干拓地ゆえ、塩分に強い綿花を栽培し、それを用いた繊維業を発達させ、真田紐、足袋、学生服、帆布と時代にマッチしたさまざまな製品を全国に送り出してきたといいます。そして1965年には、国産第1号のジーンズを誕生させました。その後、数々のジーンズメーカーが生まれたこの地は、いつしか「ジーンズの聖地」として国内外に名を馳せるようになったのです。
電車を降りたJR児島駅のホームは、自動販売機、エレベーター、コインロッカー、窓ガラス、など、いたるところにジーンズラッピングが施されています。児島駅の伊東駅長さんに聞いたところ、イスのクッションは、地域の『母の会』の方たちが手作りし、寄付してくれたものとのこと。また、ホームの天井から吊り下げられた駅名標は、「JEANS STATION 児島」と書いてあるうえ、文字の色などもインディゴブルーにするこだわりよう。
階下の改札へと向かう階段の壁面もジーンズ柄。しかもデニムファンに人気の「赤耳」と呼ばれるセルビッチデニムという凝り具合です。1階まで降りたところでふと振り返ると、階段に巨大なジーンズが描かれていて、思わずシャッターを押してしまいました。
改札機の扉もジーンズ。ちょうど窓口にいた伊藤駅長に「本物ですか」と尋ねると、「本物です」と笑顔で答えてくれました。聞くと、この地で「デニムの日」が制定されたことから、2015年に駅構内やホームにジーンズラッピングを施し、駅名も「JEANS STATION 児島」と改めたのだそう。
毎年10月26日の「デニムの日」や、春の「せんいのまち児島フェスティバル」、秋の「せんい児島瀬戸大橋まつり」など、児島の町でイベントが開催される日は、デニムのシャツとジャケット、ジーンズという制服を着用するといいます。ちなみに、イベント当日は、マスコットキャラクターのイコちゃんもデニム生地の服を着て登場し、お客さまに喜ばれているとか。「地域の人たちと一緒に、地域のイベントを盛り上げていきたい」。そんな思いから、児島駅のみなさんはさまざまな取り組みをされているのです。
駅からバス乗り場へと続く通路の一部はアーケードになっていて、頭上にはジーンズが吊り下げられています。しばし足を止め、それぞれのデザインからメーカーやブランドを想像していると、バスが入ってきました。児島地区の縫製工場やジーンズショップなどを約35分で一周する「ジーンズバス」です。
車内にはデニムの加工工程を解説するパネルが展示され、シートやカーテン、つり革の装飾までがデニム仕様。しかも、シートは児島の職人たちがジーンズのヒゲを出す手法を駆使して、作った逸品です。岡山城や下津井のタコ、瀬戸大橋など、一つひとつ異なる柄の見事さは、この地の職人の技術力の高さを物語っています。そんな「ジーンズバス」の運行は、金〜日曜と祝日のみで、各日6本。路線バスなので予約などは必要ありませんが、時刻表の確認をお忘れなく。
この日はお目にかかれませんでしたが、デニム生地で車体を覆った「リアルジーンズタクシー」や、ジーンズ柄でラッピングした「ジーンズタクシー」を利用する観光客もいるそう。
町の玄関である駅がこれだけジーンズ尽くしであれば、お目当ての「児島ジーンズストリート」はさぞや…。膨らむ期待を胸に、いざ、出発です。