公開日2022/02/15
公開日2022/02/15
中国山地の花見山東麓から瀬戸内海の水島灘まで、111㎞にわたって岡山県の西部を流れる高梁川。県下最大を誇るその流域は、倉敷市をはじめとする10市町を擁します。
「高梁川流域は、かつての備中国と言ってもいいくらい。一本の川の流域が、旧国割(令制国)の一つの国をほぼカバーするというのは全国的にも珍しい例。そんな高梁川流域には地域ごとに先祖から受け継ぐ固有の文化がありますが、高度成長期以降はそれを語る人は少なくなってきました」。そう話すのは、民俗学者の神崎宣武さん。「文化を伝え、先祖の世界を共有するのは、高度成長期以前を知っている者としての責任」と、自ら塾長兼講師となって、2012年に流域の歴史や風土、文化を伝える「備中志塾」をスタートさせました。
やがて2015年。流域の文化向上を目指す「高梁川流域連盟」を1954年に設立した初代名誉会長・大原總一郎の思いや思想、2003年から流域で行われてきた地域教育の連携「GREEN DAY 2003」を背景に、「高梁川流域学校」が設立されました。神崎さんはその校長となり、「備中志塾」は同校の主催事業の中核的プログラムとなったのです。
また、代表理事の坂ノ上博史さんは、「『備中志塾』の発展型である当校は、大学・企業・地域団体・自治体などと連携し、流域の自然や風土、歴史、文化、産業を教材とする体験学習を含む、さまざまな地域教育を実践しています」と話します。
たとえば、「備中志塾」やフィールドワーク、「エリアミーティング」をはじめとする主催事業、「高校生によるまちの匠への『聞き書き』」や「高梁川マルシェ」といった連携事業、高校や企業への出前講座など…。流域の歴史や文化の伝承にとどまらない多彩な事業を通して、学校教育・企業教育・家庭教育の補完、そして若い世代の郷土愛や地域への誇りの醸成をも目指しているのです。