公開日2015/07/17
公開日2015/07/17
林源十郎商店 倉敷生活デザインマーケット
江戸時代、幕府直轄の「天領」として栄えた倉敷。その中心にあたる倉敷川畔には、白壁の町家やなまこ壁の蔵が建ち並び、現在は倉敷美観地区として多くの観光客で賑わっています。そんな倉敷に生まれ育った難波美智子さんにとって、美観地区にある本町通りは子どもの頃から身近な存在でした。古い町並みや町家を大切にしながら新しいものを取り入れた店がオープンしていくなか、「より魅力的になっていく本町通りに携わりたい」という思いから、その一角に佇む町家喫茶『三宅商店』に、カフェスタッフとして2005年に入社。やがて店長となった彼女は、店内ギャラリーで開催する展示会などの企画・運営を手がけるようになり、2012年、美観地区に誕生した姉妹店『林源十郎商店 倉敷生活デザインマーケット』の広報を担うことになったのです。
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1本館2階のミュージアムショップ
『林源十郎商店』は、昭和初期の建物を改修・再生した、木造3階建ての本館、蔵、離れ、母屋に、カフェや雑貨店、デニムショップなど個性豊かな8店舗が入る複合施設。「そのプロデュースを手掛け、『三宅商店』の店主でもある辻信行さんとの出会いが、私の今の活動の根幹です」と、難波さんは話します。「倉敷の古い町並みが今も残るのは、時代や世代が変わっても“暮らしの豊かさへの価値観”が変わらなかったから。人々は、代々伝わる家や家具、道具をなおしながら、大切に使い続けてきました。それでいて新しくてよいものも上手に取り入れています。そうした暮らしが息づく倉敷から、『生活デザイン※1』の大切さを発信していきたいのです」。そう願う難波さんは、倉敷で生まれ、使い続けられている品々や、時代や国にとらわれない質の高い生活を、ショップやイベント、自社雑誌などを通じ全国に向けて提案しています。
※1 生活デザイン:変わりゆく暮らしの中から、人間にとって本当に大切なことをよく見つめ、生活環境を形づくっていくこと。
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2本館屋上より、「蔵」「離れ」「母屋」
3本館2階、こだわりの生活雑貨がずらり
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1林源十郎商店 / 広報:難波 美智子 さん
本町通りを仕事の場として以来、商店街や町の行事に参加するようになった難波さん。この町に住む人と人とのつながりや、一緒に町を盛り上げていこうという人々の思いを実感したと言います。また、辻信行さんの「経済の指標でしか豊かさを計れない消費社会の中で、いつしか失われてしまった、どこの家庭にもあった手仕事や地域の中でのつながりを見つめ直すきっかけになれば」という思いにも触発された難波さん。その一助となるべく、企画展やワークショップの開催にも力を注いでいます。たとえば、全国で愛用されている倉敷発のマスキングテープを用いたうちわ作りや、築125年の日本家屋に上質な北欧家具を配した展示会。夏の宵には、倉敷美観地区の町並みを見渡せる林源十郎商店の屋上テラスをビアガーデンに変身させることも…。さらに、「この地に伝わる手作り品をより多くの人に愛用してほしい」と、作り手と協力してのオリジナル商品開発も手がけています。
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2マスキングテープを使ったうちわ作り
3本館屋上テラスでのビアガーデン
「倉敷には、確かな技と質の高い素材に裏打ちされたよい品がたくさんありますが、今はよい品というだけでは生き残れない時代。でも、パッケージを新しくデザインすることで、手に取る人が増えるんですよ」。そこで、倉敷の特産品や地元企業の商品を、作り手たちと一緒に新たな品へと生まれ変わらせています。『平野商店』が県下で唯一、昔ながらの製法で手作りする飴。1785年創業の『十八盛酒造』が伝統の技で素材を生かす米麹100%の甘酒。「備中和紙」と『天賞堂祝儀店』の水引がコラボした祝儀袋。それらには、「懐かしくて新しい品として注目されることで、その伝統や技を継承する人を増やしていきたい」という願いもこめられています。
「倉敷の良い暮らしの提案と情報発信」をテーマに、衣・食・住を扱う8店と、昭和初期にこの建物を建てた「林源十郎商店」を紹介する資料室が集結。初の実店舗が話題となった生活雑貨の『倉敷意匠アチブランチ』や、世界の家具や器などの企画展示も行うショップ&カフェの『生活デザインミュージアム倉敷』、地元食材を用いる創作料理の「achimachi」…。古きを生かしつつ新しいものを取り入れた空間で、買い物や食事を楽しめる。