公開日2015/07/17
公開日2015/07/17
玉島味噌醤油 合資会社
江戸時代に行われた大規模な干拓によって作られた、倉敷市の玉島エリア。その干拓工事の成功を祈願した『羽黒神社』を中心に扇状に町が形成され、備中松山藩の外港として栄えました。なかでも、江戸時代中期には、物流の要である「北前船」の寄港により瀬戸内海屈指の商業港として発展。「仲買人が集まる問屋街」として栄えた当時の面影を色濃く残し、創業100年を超える老舗が今も軒を連ねています。4代目として中野旬一さんが代表を務める『玉島味噌醤油』もそのひとつ。江戸時代中期からこの地でさまざまな商売を手がけ、大正9(1920)年、味噌や醤油を専売する企業として創業しました。きれいな水や穀物など、醤油や味噌作りに適した原料に恵まれていたこと、また明治から大正にかけて、この地区の一大産業だった紡績工業に携わる労働者の流入によって、食品需要が増加した背景もあり、事業はまたたく間に発展。現在は、玉島の町おこしのリーダー的存在として、エリアの活性化に尽力しています。
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1「玉島歩きプラン」の様子
家業を継ぐために帰郷した中野さんは、コンパクトで暮らしやすい玉島の魅力を知ってもらいたいと町づくりに奮闘。まずは自身の商売の発展につながるイベントをやろうと生まれたのが「玉島歩きプラン」でした。中野さんは、このツアーで、昔ながらの醤油や味噌作りの工程や、本物の味わいを知ってもらおうと、醤油搾りの実演を行ったり、甘酒をふるまったり、商品の魅力に触れる「きっかけ」を提供。さらに、近隣の老舗商店にも参加を呼びかけ、地域全体で人を呼びこむ仕掛けを創出しました。他店と連動することで、見学者の滞在時間を延ばすことにも成功。「自分たちの商品をお客様に届けるためには、まず知ってもらうことが先決です。そういう意味でも、”玉島歩きプラン”はとても有効な手段でしたね」と話します。情緒あふれる町を散策しながら、代々受け継がれる商業や歴史に触れられるこのツアーは、多いときだと一日400人以上を集客。県内外から注目を集めるまでになりました。
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2醤油搾り体験
3工場見学の様子
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1玉島味噌醤油 合資会社 / 代表取締役:中野旬一さん
「仲買町」の店主たちの協力のもと、この土地ならではの魅力を発信する「玉島歩きプラン」。多くの人から好評を得ていますが、中野さんは一歩先を見据えて動き出しています。「このツアーをきっかけに、玉島を”観光の町”として成功させるのもひとつのゴールですが、ボランティアだと続かないし、自分たちの”商い”が成立しないと意味がありません。そのためにも、瞬発的なイベントだけでなく、”継続できる取り組み”を大切にしながら、地域貢献できればと思っています。玉島は、文化も歴史も色濃く残る希少な町。貿易で栄えたこの問屋街には、人々をもてなす茶室も多く残っています。今後はそれを糸口に”おもてなしの町”として事業を展開するのも、おもしろいと思っているんですよ。玉島歩きプランもそうですが、地元を知ってもらい、地元の経済発展に貢献できる企画を続けていきたいと思います」。強い求心力と行動力で、玉島を元気づけていく中野さん。次々と立案される地元愛に満ちた取組みから、今後も目が離せません。
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2江戸時代から北前船で繁栄した昔の問屋街
3玉島味噌醤油 合資会社のある仲買町の通り
「醤油は、お中元やお歳暮の代名詞的存在。それを、父の日や母の日に贈る”パーソナルギフト”にできないかと企画を練っています。白桃のドレッシングも、農家さんからいただく傷ついた白桃を商品化できないかと思ったのがきっかけです」。醤油を使った新感覚のギフトや倉敷の特産品である白桃のドレッシングなど、新商品の開発にも精力的。散策途中、涼をとる手段として、醤油味のアイスクリームの販売もスタートするなど、ここでしか味わえない体験ができる商品作りも追求しています。商品作りが人を呼び込むきっかけ作りになっているのです。
大正9(1920)年に創業。現在は4代目の中野旬一さんが、昔ながらの醸造技術に、現代の最新技術を巧みに取り入れながら、代々受け継がれてきた醤油と味噌の味を守り続けています。特に、地域性の強い商品である醤油は、「濃口」だけでも8種類をラインアップするほどの充実ぶり。人々のニーズや時代の変化に合わせて、新商品の開発にも意欲的に取り組んでいます。「玉島歩きプラン」の工場見学は、平日のみ実施。事前に要予約。