公開日2019/03/29
公開日2019/03/29
江戸時代には北前船の寄港地となり、備中一の商業港として栄えた玉島。町のあちらこちらに茶室を構えた商家が残り、往時の文化と栄華を今に伝えています。この地で生まれ育ち、全国の博物館・美術館の監修などを務める大月ヒロ子さんが、精力的に取り組んでいるのがクリエイティブリユースです。
クリエイティブリユースとは、企業や家庭から出た廃材や使われないスペースを、人の創造性(クリエイティビティ)を用いて新しい形で再利用(リユース)する取り組みのこと。ジーンズの端切れからバッグを作ったり、アパートの一室をアート空間に再生したり、創造性という新たな命を吹き込んで作られる対象は実にさまざま。モノの循環に重点を置くリサイクルやアップサイクル(古くなったものに手を加え新たな商品に作り替えること)とは異なり、クリエイティブリユースはモノだけでなくコトやヒトの循環も育むのが特徴です。
「例えばこれ」と大月さんが手に取ったのは、小さなプラスチックの破片。「これは玉島の『立花容器』さんから出た廃材です。立花容器さんでは、昔から醤油やお酒の木製桶作りを続けられていて、今はさらにプラスチックの容器も製造されています。技術を受け継ぎながら時代とともに製品の姿も変わっていっています。このプラスチックの塊!この形!創造力をかきたてられるでしょ。立花容器さんに廃材をもらいにいくと、最近は工場の方が『これは面白がるんじゃないかな?』と廃材を取っておいてくださることもあるんです。もはや廃材ではなく『素材』として扱ってくださっている。それって見方が変わったことの表れですよね」。大月さんが示すように、廃材ひとつひとつに物語があり、それと向き合うことで地域の歴史や文化について興味がわく。廃材に創造性を加え、新しいモノに再生させる。廃材を通じて人と人とのコミュニケーションが生まれる―。そういったゆるやかな循環こそが、クリエイティブリユースが秘める可能性なのです。
大学卒業後、板橋区立美術館の学芸員として数々のワークショップを企画。独立後はミュージアムの開設準備、教育プログラムの開発などを行う。