公開日2019/12/11
伝統と革新を織り交ぜながらおいしいレンコンを追求
- れんこん農家『ばしたか』髙橋農産 生産者髙橋 幹雄さん
公開日2019/12/11
伝統と革新を織り交ぜながらおいしいレンコンを追求
やわらかな肉質、シャキシャキとした歯ごたえ、色の白さが特徴の連島れんこん。
恵まれた気候風土を生かし、明治時代から産地として栄えた倉敷市連島地区で
おいしい理由と作り手のこだわりをたずねました。
水島コンビナートで有名な倉敷市水島にある連島は、古くから西日本有数のレンコンの産地として知られています。水島地区と玉島地区を結ぶ水玉ブリッジラインの沿線には広大なレンコン畑が広がり、7~8月頃には純白のハスの花が咲き乱れ、夏の風物詩として親しまれています。
もともと倉敷市連島は江戸時代末期に干拓され、明治後期に始まった水田づくりとともに、レンコン栽培が行われるようになりました。水生植物であるレンコンにとって欠かせない水は、一級河川である高梁川の豊かな水源を利用。粒子の細かい粘土質の土壌、「晴れの国おかやま」の少雨・多日照の気候風土に恵まれていたことから一大産地となりました。
ここで作られるレンコンは、その地名をとって「連島れんこん」と呼ばれ、やわらかな肉質、シャキシャキとした歯ごたえ、色の白さが特徴。さまざまな料理と相性がよいことから、有名レストランやホテルなどの食材として使われるようになりました。そうして倉敷を代表するブランド野菜として認知されるようになり、現在、約30軒の生産農家が栽培を行っています。
レンコン農家の3代目・髙橋幹雄さんは、6年前から家業を継ぎ、2代目である父・猛さんと一緒にレンコン作りに励んでいます。連島れんこんの品種は、約40年前に倉敷市連島で偶然発見された「オオジロ(大白)」という早生の品種で、約30年前からこの地区では「オオジロ」が主流となりました。
レンコンは4月に種植えを行い、9~翌5月頃まで収穫を行います。この日も、髙橋さんは収穫作業の真っただ中。最近では、収穫ポンプの水圧を利用してレンコンを掘り出す方法が一般的ですが、連島地区では畑の水を抜き、特殊な刃のショベルカーで上層部の泥をとったあと、1本ずつ鍬(くわ)を使って掘り起こしていきます。長期間水を抜いた状態が続くことで土の圧力がかかり、身の詰まったおいしいレンコンができることから、今も伝統的な手法で収穫が行われています。
「レンコンに傷がつかないように、これまで培った経験と知識を頼りに鍬を入れていきます。子どもの頃から祖父や父の収穫作業を手伝っていましたが、中腰のまま掘り続けるのはやはり大変ですね」と髙橋さん。手に持っている鍬は、レンコンを掘るために開発された特注品。この鍬を作る職人はどんどん少なくなってきている貴重な道具です。1本ずつ人の手で掘り出すため、収穫量も限られますが、「おいしいレンコンを届けたい」という熱い思いから、ひたむきに作業が続けられています。
「連島れんこん」と北海道産の小豆・国内産の砂糖を使った、採れたてのレンコンの「シャキシャキ感」を生かした素朴な味わいの和菓子です。外側のパッケージには倉敷のなまこ壁をイメージした包装を使用しており、中も外もご当地のお菓子としてふさわしいものとなっています。
サイコロ状に刻まれた「連島れんこん」と、カリッと揚げられた衣が絶妙な食感のこのれんこんコロッケ。「連島れんこんを使って地元の特産品を作りたい」と考えたJA倉敷かさや青年部の皆さんが考案したことに始まった、「JA倉敷かさや倉敷青空市やさい畑」で主に販売されているオリジナル商品です。 ぜひお試しあれ!
「質のいいレンコンを安定して作りたい」と髙橋さん。そのためには、水の管理と土の管理が重要だと教えてくれました。
2015年に岡山県内で初めて、環境にやさしい農業を行う「エコファーマー」に認定され、できるだけ農薬に頼らず、病気や害虫に強い作物を作る環境づくりに努めています。レンコンは水が少なくなくなると病気にかかりやすくなるため、特に夏場は注意して管理しています。土の状態がよくないときは、しっかりと堆肥を加えることで改善を図っています。
「農家によっては病気を心配して堆肥を入れないという人もいますが、これは正解がないんですよね。農業は子育てと同じで、みんなやり方が違います」。試行錯誤を繰り返しながらも、より質の高いレンコン作りに向けて髙橋さんの挑戦は続きます。
さらに、連島れんこんの発信に向けた取り組みとして、5年前からは、地元の小学校の一角を利用し、子どもたちと一緒にレンコン作りも行っています。「夏休みには地域で盆踊り大会が開催されるんですが、地元のPTAの方々が連島れんこんを使ったメニューを販売してくれています。学校でのレンコン作りや夏休みの思い出を通して、子どもたちにも連島の特産品としてレンコンのおいしさや魅力を知ってもらいたいですし、地元のつながりを大事にしていきたいですね」。そう目を細めて話す姿が印象的でした。
夏にはまた、広大な連島の干拓地に純白のハスの花が咲き乱れます。「この風景を次の代、さらに次の代へと残していきたい」。その思いを胸に、髙橋さんは今日も真摯にレンコンと向き合います。
倉敷市の南西部に位置する連島は、かつて周りを海に囲まれ、「都羅島」とも呼ばれた諸島でした。江戸時代に干拓されました。この地特有の粒子の細かい土壌、岡山県の三大河川のひとつ・高梁川の豊かな水、そして倉敷の少雨・多日照の気候風土を生かし、明治時代にはレンコンが栽培されるように。さらに昭和初期にはゴボウの栽培もスタート。太く真っすぐな形、やわらかい歯ざわり、美しい白肌が特徴で、「連島ごぼう」として親しまれ、2016年にはゴボウとして初めて国の「地理的表示(GI)保護制度」に登録されました。また、ショウガの栽培も盛んで、その大きさ、みずみずしさが特徴です。ハウスと露地で栽培するため、6〜12月の長期にわたって出荷されます。
連島れんこん、ショウガの出荷量は岡山県内で最多、また連島ごぼうの出荷量は中国・四国地方で最多を誇り、産地として全国に名を馳せるまでに成長しました。自慢の農産物は、連島周辺の直売所やJAなどで購入でき、れんこんコロッケなどの加工品も楽しめます。
連島の南側には標高78mの亀島山があり、その山の西側から高梁川河口付近東側沿岸のあたりにかけての水玉ブリッジラインの沿線付近一帯に、延々と約35haにわたってレンコン畑が広がっています。夏季にはハスの花が純白の大輪の花を咲かせ、その光景はとても綺麗で美しく魅力的です。