公開日2020/11/16
公開日2020/11/16
日本で初めて海水浴場としての施設が開設されたことから、日本最古の海水浴場ともいわれる倉敷市の沙美海岸。緑の小島が点々と浮かぶ穏やかな海と白い砂浜が織りなす海景色は、「日本の渚百選」にも選ばれています。
その海辺近くに佇むのが、地域の美術文化の振興を目的に、アート教室やアートイベントの開催・サポートなどの活動を展開する「秀 art studio」です。
開設したのは、御年90歳の今も、絵画や版画、モニュメントなどの制作に情熱を傾ける美術作家の高橋秀さん。
1963年にイタリア政府招聘留学生としてローマに渡って以来、伴侶であり布貼り絵作家として多くのファンを持つ藤田桜さんとともに彼の地で暮らし、制作活動を続けていました。数々の賞に輝き、国際的な美術作家となった高橋さんが、41年のローマ暮らしに終止符を打ち、この地に移り住んだのは2004年のことです。
「作家としての制作活動だけを考えると、ローマの方がずっと有利。しかし、倉敷芸術科学大学の教授となった後、イタリアと日本を往復するうちに、『このままでは日本はだめになる、日本の若者を放っておけない』と思うようになっていった。イタリア社会はちゃらんぽらんだけど、個人というものをしっかり持っている大人の社会で、日本もそうあってほしい、と。何より、アートというのは生きることの根源。わずかでもいい、若い子たちにアートと何らかの関係を持ってほしいという願いから、帰国して、ここを立ち上げたんだ」。
以前から海の近くに住みたいと考えていた高橋さんと藤田さんは、いくつかの海岸を訪ねた末、この地にアトリエと住まいを構えました。
惹かれたのは、景色のすばらしさ。そして、「大学の学生たちには社会人との接触が必要」との考えから、起業家や商店主をはじめとする地域の人々とつながるなかで、倉敷人の温かさを感じていたことも決め手のひとつだったと言います。