公開日2021/03/25

地域と歩む真備竹林麦酒醸造所の軌跡

真備竹林麦酒醸造所は2023年3月末をもって閉所しました。
今後はまちの復興の役に立てるよう、新醸造所開設に向けて取り組んでいくとのことです。
※「真備竹林麦酒」の商標と製品は、別会社に引き継がれます。

Chapter2 西日本豪雨による水害からの復興のために

 「真備竹林麦酒醸造所」は、2017年に新たなチャレンジを始めました。それは、倉敷市にある「岡山大学資源植物科学研究所」の佐藤和広教授がビール用品種として開発した大麦を、近隣農家に育ててもらい、それを原料とする完全倉敷産地ビール「くらしき物語」を造るプロジェクト。多田さんたちは、米国製の機械を新規導入し、倉敷市立短期大学の学生さんたちに瓶のラベルをデザインしてもらい、初出荷を目指してビール造りを進めていました。

くらしき物語
大麦

 ところが、2018年7月6日深夜から7日にかけて、真備町一帯は西日本豪雨による洪水に見舞われました。初出荷を目指していた「くらしき物語」は、後は瓶に詰めて出荷という段階でしたが、「マインド」の醸造所や作業所、グループホームも浸水の被害を受けました。幸い「マインド」の関係者はみんな無事で、16名のグループホームの利用者たちは町内にある病院に避難することとなりました。

被災当時の様子
被災当時の様子
被災当時の様子
被災当時の様子

 「マインド」は、水が引いた数日後にビアホールをボランティアセンターとして開放。多田さん自身も地域の家々の泥出しや清掃のボランティアに没頭しました。「あの時は、目の前の泥をかき出すことしか考えていませんでした。夜になると本当に真っ暗で、町には誰もいなくて、田んぼのカエルの声や虫の声ひとつ聞こえてきませんでした」。

ボランティアセンターとして開放したビアホール
ボランティアセンターとして開放したビアホール

 同年8月1日、ドロドロのグループホームを拭き上げて、避難していた16名が帰ってきました。彼らの中から、「自分たちを迎え入れてくれた町に恩返しがしたい」という声が上がります。そうしてその月から、毎月第3土曜日に「地ビールと音楽の夕べ(のちに「まちコン」と改名)」を開催するようになったのです。避難生活でバラバラになった町の人たちが集まる「場」を設け、奇跡的に無事だったビールを振る舞い、みんなで音楽を聞き、歌い、みんなで無事を喜びあいました。

地ビールと音楽の夕べ
地ビールと音楽の夕べ
地ビールと音楽の夕べ
地ビールと音楽の夕べ
地ビールと音楽の夕べ

 また、8月には、真備町復興プロジェクト「一緒にやろう!」もスタート。交流のあるシンガーソングライターの沢知恵さんや、ロックバンド「MONGOL800」のキヨサクさんらの賛同と協力を得て、全国から集まった寄付金は、地域の洋食店、パン店、理美容院等に再起の資金として手渡しました。さらに、11月にはみんなで「お互いさまセンターまび」を開設。生活の困りごとに関する相談や移動手段を失った人の送迎など「被災者同士で助け合う仕組みづくり」を始めました。
 こうしたさまざまな活動は、「マインド」の面々の「真備の人々とともに立ち上がり、町と一緒に復興していきたい」という強い思いが原動力だったといいます。

一緒にやろう!
沢知恵さん
一緒にやろう!
ライブを楽しむ多田さん
キヨサクさん

他にもこんな特集があります。

  • 特集44 SDGsなクラシキ3 -ITONAMI- Chapter.1
  • 特集31.- 倉敷素隠居保存会
  • 特集10.ARKO 2016 – アーティスト・イン・レジデンス 倉敷 大原 –

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