倉敷人に聞いてみた

  • 座談会のメンバー

    観光地として名を馳せる倉敷で、学び、活動し、日々を営む人々。 出身地も職業も異なる5人に、倉敷への熱い想いと、町の「今」を語ってもらいました。

  • ゲストハウスオーナー
    中村功芳さん
    倉敷市出身。美観地区のゲストハウス『有鄰庵』のオーナー。地域の魅力を世界に発信するNPOの理事長も務める。
  • 民藝を勉強中
    髙橋倫子さん
    神奈川県横浜市出身。今年4月から『倉敷本染手織研究所』で染めと織りを勉強中。美観地区の中に建つ古民家で民藝品に囲まれて暮らす下宿生活を楽しんでいる。
  • ミュージシャン
    土師剛さん
    岡山県総社市出身。生活拠点を倉敷に移して4年。倉敷から全国に向けて音楽を発信するカリプソミュージシャン。
  • バーテンダー
    楠戸まゆみさん
    倉敷市出身。美観地区にあるバー『サロン・ド・リックス』のオーナーバーテンダー。日本バーテンダー協会が開く、全国バーテンダー技能競技大会にたびたび出場する実力派。
  • 働くお母さん
    佐伯奈歩さん
    倉敷市出身。2児の母。勤務先である倉敷市内の病院近くの保育所に子どもを預け、介護福祉士として働く。今回は子どもも参加。

白壁の町並みが続く倉敷美観地区や、雄大な瀬戸内海の景観、世界的な名画を収蔵する大原美術館などを擁し、観光地として全国にその名を知られている倉敷。その魅力を支えているのは、そこに暮らし、学び、働く、多くの「倉敷人」の日々の営みです。ある日、集まったのは、倉敷で生まれ育った、あるいは倉敷に惹き付けられるように移り住んできた5人。それぞれの立場から、倉敷の「今」について、語ってもらいました。

暮らしに息づく、用の美を生み出す町。

中村 ずっと住んでいると分からなくなるんだけど、倉敷はどうですか?

髙橋 今年4月、倉敷本染手織研究所(以下、本染手織研究所)で染めと織りを学ぶために奈良県から移ってきました。今は、倉敷美観地区(以下、美観地区)の真ん中のすごく古い家に住んでいるんです。最初はびっくりしました、「ここに住むの!?」って。そこは、創設者の外村先生のご自宅だったのですが、使う食器とか周りにある生活用品も、古いけど良いものばかり。民藝品に囲まれた生活は、タイムスリップしたような感じです。

土師 本染手織研究所って?

髙橋 民藝の考えと織物の技術を学ぶ小さな私塾で、60年以上続いています。

佐伯 なぜ、本染手織研究所に入ろうと思ったんですか?

髙橋 以前は木工をやっていたんですが、家で一生続けられて、おばあちゃんになってもできるものって何だろうと考えていた時に知ったのがきっかけ。もともと民藝品や古いものが好きだったのもあるし、自分に合う服を自分で作れたらいいなと思ってもいたので…。手作りの染織物は一般的にあまり売れない時代だけど、職人的な存在になりたいと思ってます。

中村 染織も含め、民藝は日本の美のひとつ。日本の美には見た目の美もあるけど、使い勝手の美、名前を売らないという無名の美、作り手の姿勢の美もある。そうした美しいものを一個ずつ身の回りに揃えていく生き方がアートになっていくと思う。倉敷は、それを生活の中で自然と実践している地ですよね。

楠戸 本染手織研究所が長く続いていると聞き、改めて嗜好品文化の豊かな町なんだと思いました。それに、私も民藝が大好きだから、倉敷でそれを学ぶ人がいるって何か嬉しいですね。

倉敷本染手織研究所

作家の養成や趣味の染織のためでなく、日々の暮らしの中で働く「健康でいばらない美しさをそなえた布を織る繰り返しの仕事を励む工人を育成する学び舎」として、1953年に設立された。民藝運動家としても知られる故・外村吉之介氏が、自邸を開放して開いた小さな私塾。各地から集まった6~9人の女生徒が1年間生活を共にしながら、手紡ぎ、草木染め、手織りなど、綿から布にするまでを学んでいる。

倉敷美観地区

江戸幕府の直轄地「天領」に定められた際に倉敷代官所が当地区に設けられ、備中国南部の物資の集散地として発展した。白壁なまこ壁の屋敷や蔵が並び、江戸時代からの風景を色濃く残した「倉敷美観地区」は、伝統的建造物群保存地区であると同時に、今を生きる人々の生活の場にもなっている。


情熱を持つ人には、挑戦しがいのある町。

中村 楠戸さんは人気の実力派バーテンダー。バーを経営されているんですよね。

楠戸 結婚前から、駅前でバーを経営していて、民間プロジェクトの一環として、美観地区に昨年オープンした『クラシキ庭苑』に、2店目を開きました。

佐伯 倉敷で開業するのは大変ですか?

楠戸 そうですね。倉敷は新しいものに対して、最初は反発があると思うんです。でも、地元で仕事をしているとその辺は和らいでいくというか、馴染んでいけます。ありがたいことに、町の皆さんがお世話好きですし。

中村 僕がこの宿屋を開いた時は、倉敷市の商工課の方が親身になっていろいろと相談にのってくれて、創業支援の制度のこととかも教えてもらいました。でも、倉敷の人たちは見識が高くて見る目があるから、中途半端だと見向きもされない。ある意味大変だと思う。

土師 音楽をする立場としては、絶対これでやっていくぞって、本気で腹を決めると、倉敷の人たちの中に入っていけるし、成長していける。ここにはすごい人たちがたくさんいるんで、磨かれるし、引っ張っていってもらえる。倉敷で実際にやってみて、そういういろんなものが見えるようになりました。

髙橋 結局は人と人ですよね。

楠戸 そう。私の中には、本気の人には熱心に応援してくれる誰かが現れるというイメージがあります。

中村 そういった人間関係が面倒な人にとっては、鬱陶しい町かもしれません。だけど情熱を持っているなら、それ以外に持っているものがゼロでも、10まで育てよう、そこまでいったら次は20まで育てよう、やがて100まで育てようという奇特な方が出てくる。町が育ててくれるんだから、真摯にチャレンジする人にとってはすごくいい町だと思う。

クラシキ庭苑

倉敷市の中心市街地活性化基本計画に基づく民間プロジェクトの一環として、美観地区内に2014年6月にオープンした複合商業施設。古い柱や梁など築100年の町家の基本構造と、歴史を感じさせる雰囲気をそのまま活かした空間に、ビスケットが楽しめるカフェ、コーヒー専門店、ショットバー、帽子専門店が集結。中庭へと続く通路に設けられたオープンテラスは、美観地区の憩いの場ともなっている。

創業支援

倉敷市では、「店を開きたい」「会社を設立したい」と考えている人の相談窓口「くらしき創業サポートセンター」を設置。14か所にあり、専門の相談員が対応。また、「倉敷市がんばる中小企業応援事業費補助金」制度のひとつ「起業家支援事業」では、店舗や事業所開設の費用の一部を補助している。

他にもこんな特集があります。

  • 特集51 つなぐクラシキ – 融民藝店 – Chapter.1
  • 特集 vol.9 倉敷うまれの さ.し.す.せ.そ
  • 特集46 水島臨海鉄道 – 西日本唯一の臨海鉄道 – Chapter.1

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クラシキ文華(文化 - ブンカ)

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