公開日2015/11/30
公開日2015/11/30
情緒ある町家の中には、貴重な宿泊体験ができるスポットがあります。
暮らすように過ごしてみてこそ見えてくる倉敷とは? その魅力をレポートします。
江戸幕府の直轄地「天領」として栄えた歴史と風情ある景観が色濃く残る「倉敷美観地区」。全国から多くの観光客が訪れる人気のエリアですが、今も多くの人々が日々の暮らしを営んでいます。今回は、そんな普段の倉敷の表情や魅力に触れるべく、30代の夫婦2人で美観地区の一角に佇む「町家暮らし」の体験をしてみました。
倉敷の玄関口・JR倉敷駅に到着したのは、お昼前。今回の目的である町家ステイが体験できる町家は、倉敷美観地区からほど近い場所にあります。にぎやかな駅前を通り抜けると、古くから商いを続けている商店や小料理店、小さなかわいい雑貨店など、新旧さまざまな店が軒を連ねるアーケード街に到着。ふわりと漂ってきたおいしい香りに誘われて、肉屋さんが作る揚げたてコロッケを買い食いしてしまいました。
そうこうしている間に倉敷美観地区に到着。目の前には、かつて江戸時代に幕府の「天領」として栄えた、なまこ壁を備えた商家や蔵などが連なる歴史ある町並みが広がり、その情緒あふれる雰囲気にあっという間に惹きこまれていきます。白壁と柳並木のコントラストの美しさにも目を奪われながら歩いていると、これから生活する町家が見えてきました。
通常だと倉敷美観地区から徒歩3分ほどの距離を、寄り道しながら15分かけて目的地の町家「バルビゾン」に到着。ここは、築90年近い建物を再生した1日1組限定の1棟貸しの町家です。「女性限定の少人数のドミトリーとしてもご利用いただけますよ」と説明してくださったのは、管理人の山田さん。2015年9月、古民家を再生して作られた館内は、新しさの中にも飴色の柱や味わいのある土壁が残り、当時の面影を今に伝えていました。
1階には、8畳と6畳の和室が2間続きで広がり、共用スペースとして開放。さらに、調理機材や食器などがそろうキッチンをはじめ、バス、トイレが備わり、いずれも洋式で使いやすく改装されています。町家の雰囲気を楽しみながらも、快適に過ごせる工夫が感じられました。2階にはベッドが並ぶ寝室があり、窓の向こうには倉敷アイビースクエアの赤レンガが広がっています。いわゆる「観光」とは違った角度から倉敷美観地区を体感できる贅沢なシチュエーションに感動しました。そして、目の前に広がる景色が、昔、この町家に暮らしていた人が見ていた景色と同じだと思うと、なんだか感慨深い気持ちがこみ上げてきました。これから過ごす数日に備えて準備を整えたり、外に出る支度をしたりしているうちに、だんだんと「町家に暮らす」実感が沸いてきました。
チェックインを終えて、いよいよ倉敷の町並み散策へ。まず訪れたのは、宿の向かいに建つアイビースクエア。紡績工場の跡地を利用した複合施設で、特に赤レンガ造りが印象的な和と洋を融合した建築は圧巻!その建築美に思わず時間を忘れて見とれてしまいました。アイビースクエアの石畳道を抜けると、いよいよ観光客で賑わう倉敷美観地区のメインストリートへ。日本初の私立西洋美術館の大原美術館や民藝の町・倉敷を知ることができる倉敷民藝館など、興味深い施設がたくさん立ち並ぶエリアで、商人の町として栄えながら、優れた文化や芸術が根付き、発信してきた倉敷の魅力にふれることができます。さらに、独特の建築美を持つ「倉敷格子」や「倉敷窓」など、倉敷町家ならではの意匠が残る蔵や、町家を再生したカフェ、雑貨店、複合施設も多く見られ、「古き良き」を大事にしながら常にアップデートされている町の一面も垣間見えました。
町全体がまるで一つのミュージアムのような町並みをぐるりと散策したあとは、再び商店街に戻り、待ちに待った昼食タイム。昼食として選んだのは、倉敷名物「ぶっかけうどん」です。ぶっかけうどんとは、濃いめのだしを麺に直接かけていただくうどんのこと。もっちりとした食感の麺に、甘辛い醤油ダレが絶妙に絡み合い、あっという間に完食。倉敷のソウルフードに大満足です。