公開日2025/03/17
1910(明治43)年からラムネを作り続ける飲料製造の老舗「倉敷鉱泉株式会社」。
ラムネ製造に加えて、調味料作りと向き合う作り手にお話を伺ってきました。
公開日2025/03/17
昔ながらのラムネとこだわりの調味料
2つの軸で歴史を紡ぐ倉敷の老舗
1910(明治43)年からラムネを作り続ける飲料製造の老舗「倉敷鉱泉株式会社」。
ラムネ製造に加えて、調味料作りと向き合う作り手にお話を伺ってきました。
倉敷美観地区の本町通り東端から歩いて約3分。住宅街の一角にある「倉敷鉱泉株式会社」は、1910(明治43)年からラムネを作り続ける飲料製造の老舗。「高祖父母が足守(岡山市北区)でラムネを作り始め、終戦後、祖父の石原潤七郎は縁あって倉敷に移転し、当社を設立したと聞いています」と、三代目社長の石原信太郎さん。
ラムネは、流通が発達していなかったことと、1977(昭和52)年の「分野調整法」で「中小企業の特有の品種」として大企業の参入が制限されたことから、全国各地の小さな飲料メーカーが製造していました。しかし、飲料の多様化、缶やペットボトル、自動販売機の登場、流通の進化などの影響で、そのほとんどが廃業していったのです。
そんな中、潤七郎さんがラムネ製造の合間に、ジュースの充填機を活用して手作りしていた業務用お好みソースが、地元生協のブランドソースに指定されます。さらに、「添加物のないものを」との依頼でウスターソースやポン酢を開発。ラムネに加えて、調味料製造の一歩を踏み出しました。
転機となったのは、二代目社長であり父である信義さんが、大学の先輩で釣り仲間でもある森田酒造の代表・森田昭一郎さんから言われた「一番おいしい焼肉のたれを作ってほしい」というひと言。森田さんは、倉敷美観地区に食のセレクトショップ「平翠軒」を開くにあたり、目にかなう商品を求めていたのだといいます。
「原価はいくらかかってもかまわない」。そんな森田さんの言葉に背中を押され、信義さんは素材選びにも作り方にもとことんこだわり、焼肉のたれを完成させました。
この時に得た、「自然の恵みであるそれ自体の形がわかるよい材料を選び、余計なものを加えず、手間を惜しまずていねいに作る」との思いは、調味料ブランドとして立ち上げた「倉敷味工房」のコンセプトとして変わることなく受け継がれています。