公開日2025/11/4
公開日2025/11/4
日々、三宅さんが作っているのは、皿や茶碗、湯呑み、マグカップといった日常づかいの器です。石膏型やろくろで形成し、押紋やイッチン、流し掛けといった技法と、数種類の釉薬を用いて表情豊かに仕上げられています。


「粘土は、酒津の土と西条の土、石見の白土を混ぜています」。そう話す三宅さんは、酒津の土が好きで、修行時代から休みを利用して掘った酒津の土を用いていたそう。「酒津の土には砂が多く混ざっているので、昔の窯道具に入れて素焼きし、それを粉々に砕き、粘土に混ぜています。手間がかかるから大変なんです」。言葉とは裏腹にどこかうれしそうな表情で話す三宅さんは、押紋の皿を見せてくれました。
「石膏型は縁が切れやすいので、模様を彫ったローラーで押し固めて縁切れを防止します。模様をつけるだけでなく技法としても成り立っているんですよ」。




三宅さんが、常々心がけているのは「今の生活に合う器づくり」。そのため、デザイン性はもちろん実用性にも工夫を凝らしています。たとえば、一般的に陶器は不可とされている電子レンジにも使える器。粘土の割合や釉薬の種類、焼成温度などを試行錯誤し、作り出したのだそう。





「出番が多く、食器棚の一番手前に置かれるような器になるとうれしいですね」と話した三宅さんは、最後にこう語ってくれました。
「倉敷の焼物は陶芸を始めたきっかけであり、修業中も今も大好きなので、僕の焼物がこの地に根付いて、倉敷の焼物のひとつになれれば…。そして、この先もずっと倉敷の焼物がなくならないよう、誰かに後を託せるまで作り続けたいと思っています」。




縁を飾る押紋は、レトロな文様からアルファベットをモチーフにしたものまでさまざま。

白い液体で模様を描いたイッチンの器。伸びやかなラインが楽しげな趣をもたらしている。

柄杓で釉薬を流し掛けているので、変化に富み、同じ模様はふたつとできない。


「この地に力強く根付く焼物に」という思いを込め、裏山の名から「倉敷青木窯」という窯名に。開窯から日は浅いが、手にした時の厚みと重さから伝わる力強さと安心感、民藝品の趣と新しい感覚を融合させた独自性で、多くの人から支持されている。
