江戸時代末期の1806(文化3)年の創業から200年以上にわたってこの地で酒を醸し続けてきた「三冠酒造」。「そのうち7代目」の前畠眞澄さんはもともと長く異業種の会社を経営していました。しかし、15年前に6代目の父が廃業を決意した時、「代々受け継いできた蔵を潰すのは忍びない」と使命感に目覚め、酒造の道に入ったといいます。




そんな前畠さんが目指すのは、「名脇役に徹し、食事を主役にする酒」。岡山県産の雄町米と朝日米、そして、昔はこの地の生活用水として使われていた井戸水「みこえの水」を用い、さまざまな料理の旨味に合う酒を生み出しています。



前畠さんが戻った当時、隣町の住人にさえ蔵の存在はほとんど知られていなかったといいます。しかし、「お酒を飲まない人にも楽しんでもらいたい」と直売所に用意した「みこえの水」のかき氷(夏季限定)が評判となり、夏には1週間で300人が訪れることもある人気スポットとなりました。もちろん、直売所に並ぶ酒の中から3種類を選べる「角打ちセット」で飲み比べも楽しめ、「仕込み水のおいしさを知ってほしい」との思いから通年提供するコーヒーも味わえます。





こちらが醸す酒は、天皇陛下から二度の褒状を授与されたことから三度目を目指して改称した看板銘柄の「三冠」が8割。あとの2割が、倉敷産の雄町米を用い、手間も時間もかかる生酛(きもと)造りで醸した「和井田」です。「いずれも、辛めの酒造りに適した中硬水の井戸水で仕込んでいるので飲み飽きせず、さまざまな料理の旨味によく合います」と前畠さん。
なかでも児島の古名を冠した「和井田」は、近年注目されている「お燗酒(かんざけ)を着地点に生み出した銘柄」。その狙い通り、2025年に開催された「雄町サミット」の「燗酒部門」で、「和井田 生酛純米」が最優等賞に輝きました。
また「三冠 雄町45純米大吟醸」は、2024年にフランス・パリで開催されたヨーロッパ最大級の日本酒イベント「サロン・デュ・サケ」で、ソムリエやレストラン関係者などが選ぶ「サロン・デュ・サケ プロフェッショナル入場者賞」を受賞しています。



「実は、2025年は真庭市の『辻本店』が同賞、2023年は倉敷市児島の『十八盛酒造』が『一般入場者賞』と、3年連続で受賞するほど岡山の酒のレベルは高いんです。その味わいを知ってもらうため、まずはどうしたら手にとってもらえるかを、ほかの蔵元とともに一生懸命に考えているところです」と前畠さん。今後の展開が楽しみです。






