公開日2016/10/29
公開日2016/10/29
倉敷の大原美術館が行う若手育成支援事業「Artist in Residence Kurashiki, Ohara(アーティスト・イン・レジデンス 倉敷、大原)」の略称で、大原美術館が選出した若手アーティストが倉敷に滞在しながら作品を制作するレジデンスプログラム。14回目となる今回は、画家・名知聡子(なちさとこ)さんを招聘。3カ月に及ぶ創作活動に密着しました。
大原美術館が「ARKO 2016」に招聘したのは、東京出身で現在は名古屋市で創作活動を行う画家・名知聡子さん。巨大なカンバスに写実的な人物画を描く作風で、名知さんはそこに「想いを寄せる人=好きな人」を表現していたと言います。「ここ10年間は、好きな人に気持ちを伝えたくて自画像を描いていました。表現は気持ちに左右されますが、今思えば痛々しいような、毒々しい絵が多かったですね」。
そして、最近は作品を描き続けるうちに、描かれた自画像が自立して別の人格を持つようになったと言います。「自分を描いているけど自分じゃない、好きな人でもない、家族でもない。いつも作品のそばにいる『この子』は誰なんだろう…」。描くうちに気づいた特別な存在を胸に秘めながら、「ARKO 2016」のプログラムに応募。倉敷という新天地で創作に挑むことになったのです。
制作のため名知さんが倉敷を訪れたのは2016年7月。大原美術館の礎を築いた洋画家・児島虎次郎の旧アトリエ「無為村荘」で、約3カ月間に及ぶ滞在制作が始まりました。
初めて倉敷を訪れたのは2015年の日帰り旅行。「大原美術館と倉敷美観地区に行ったんですけど、まちもきれいだし、小さくてかわいい店もたくさんあって、1日じゃ足りないくらいおもしろかったんです。まちにアートが根付いているし、何より地元の人がすごくいい人ばかり。すてきなまちだなと思って」。
そして、制作の舞台となる「無為村荘」を訪れてからも大きな刺激を受けたと言います。「無為村荘は、森のように緑が豊かで、創作意欲をかきたてる場所。名古屋にあるアトリエと違って、天井が高く、自然光がとてもきれい。とにかく環境がすごくいいんです。毎日森や木を見ていても飽きない、一日の描く時間がたりなくて。自然のにおい、生命力を感じながら『あれもこれも描きたい!』って気持ちになるんです」。彼女にとって、何もかもが新鮮だった倉敷の豊かな自然とアトリエ。そこから湧き上がる創作意欲を受け止めながら、倉敷での制作が始まります。