公開日2019/03/29
公開日2019/03/29
クリエイティブリユースに親しんでほしいという思いから、IDEA R LAB & Material Libraryでは、様々なワークショップやイベントを行っています。取材した日も廃材を使ってプレゼントを作る「ちいさな贈り物とちいさな絵本」というワークショップが開催されました。講師役として神戸市在住のクリエーター・朝倉民枝さんが招かれ、参加者は地元・玉島はもちろん、岡山市や瀬戸内市などから訪れた男女8人。
まるで宝物を探すように廃材から使う素材を選び、創造力を働かせながら思い思いの作品を作っていました。印象的だったのは、接点のない人たちの距離がモノづくりを通じて徐々に近くなっていったこと。「楽しかったわ」とほほ笑む参加者の顔が、その満足度を物語っているようでした。
「こうした活動を通じて、様々な出会いが生まれました」と大月さんが紹介してくれたのは、Material Libraryの一角に設けられたカフェ。ここを切り盛りするのは、大月さんの活動に惹かれ移住を決めたパートナーに続き、1年遅れでやってきた南さんです。机やイス、キッチンや床のタイルなどの廃材を生かして作られたもので、随所にクリエイティブリユースが息づく空間が魅力的です。
クリエイティブリユースを通じたコミュニティの輪は、玉島の各地に広がっています。例えば玉島清心町商店街にある「TAMAYA TAMASHIMA(たまや たましま)」もそのひとつ。やはり、大月さんの活動に惹かれ、移住後2年ほどして、元洋品店の空き店舗を購入した齊藤さん。ここをアートセンターとして運営しており、レジデンスとして開放したり、ライブやイベントを開催したりしています。
また、LAB管理のアパート2棟でも、クリエイティブリユースを軸にした様々なプロジェクトが展開されています。「玉島マチヲプロジェクト」として、笠岡市在住のアーティスト・川埜龍三さんがアパート一室をまるごと作品化。架空の人物・玉島マチヲ(玉島生まれ、玉島育ち)が住んでいる部屋「オレンジハイム103号」は、様々な写真でコラージュされた摩訶不思議な空間が印象的です。実際に部屋の中に入ることができ、玉島マチヲさんの人物像をたどるアート体験ができます。
その2階にあたる「オレンジハイム203号」では「シェアアパートプロジェクト」を実施。廃材で作ったイスなどで彩られた空間に宿泊できるというものです。
同じくLABが管理している「テラスマローネ101号」では、モノをあげたり、もらったりする「アゲモラプロジェクト」を開催。Facebookで行われていた物々交換のリアルスペースとして2017年に誕生しました。管理人を務めるのは、倉敷市在住の写真家・石本均志さんと造形作家・時実月夜さん。誰かにとっては不要となったモノに新たなステージを与える場として、週1回ほど部屋を開放しています。
いずれも共通しているのは、玉島以外の人たちが大月さんの活動に共鳴しこの地で活動・創作をしていること。クリエイティブリユースを通じて、人と人とのコミュニケーション、さらにはコミュニティも豊かになっていく現在進行形の玉島の姿がありました。「手仕事の文化が息づく玉島で、モノづくりを日常ベースに根付かせたい。県内外のクリエーターが集まり、地元の人とつながれる、そういうコミュニティの輪が広がると、もっと楽しくなりそうですよね」。大月さんが目指す廃材を通じて広がる輪は、玉島をクリエイティブリユースの拠点として、これからも地域にしっかりと根付き、大きく育つに違いありません。