公開日2023/12/26
公開日2023/12/26
倉敷美観地区の西南端近く。車一台がやっとの小路沿いに佇む『住吉町の家 分福(以下、分福)』は、1926(大正15)年から1928(昭和3)年にかけて建てられた旧浅野邸を再生した、コワーキングスペース&サテライトオフィスです。
二階建ての古民家に用意されているのは、ワークスペースや会議室として使える大小5つの部屋と、サテライトオフィス1室。中には動画配信システムを備えた部屋もあり、セミナーなどのオンライン開催にも活用できます。
倉敷美観地区はもちろん、倉敷市立中央図書館や倉敷市立美術館をはじめとする複数の文化施設が徒歩圏内に点在。倉敷駅から徒歩15分とアクセスもいいので、倉敷観光の合間に仕事や勉強をしたいという遠来の人にも利用されています。
「倉敷市による、高梁川流域圏域の自治体を対象としたテレワークの勉強会に2016(平成28)年から参加していて、その中で総務省がテレワーク拠点の募集をしていることを知ったのが、ここを開くきっかけでした」。そう話すのは、「一般社団法人 高梁川プレゼンターレ」代表の坂ノ上博史さん。
当時、「みんなが集まって働ける場所がほしい」と考えていた坂ノ上さんは、倉敷市と「倉敷芸術科学大学」「一般社団法人日本テレワーク協会」と協力して、「倉敷らしい古民家を活用したテレワーク拠点」をコンセプトに応募。翌年度の事業として採択され、2018(平成30)年3月に『分福』をオープンさせたのです。
古民家のしつらえを極力残した建物には、大きな机と椅子を配した和室や洋室、あるいは座卓と座椅子、座布団を配した和室、さらに庭を望みながらひと息入れられる縁側もあります。
「たとえば、畳の上だと気持ちが落ち着きますし、会議でもリラックスして意見を出し合えたりしますよね。日本家屋ならではの和やかな雰囲気を、仕事に生かしてもらえればと思っています」。
「黙々とひとりで仕事をするのも大歓迎ですけど、空間を共有することでいろいろな仲間ができたり、我々スタッフが別の方を紹介することで、新しいつながりやプロジェクトが生まれるといいなと思っています」。
そう話す坂ノ上さんが事務局長を務める「一般社団法人MASC(岡山県倉敷市水島地域への航空宇宙産業クラスターの実現に向けた研究会)」は、そんなプロジェクトのひとつ。設立当初の会員はわずかで『分福』で会議をしていたそうですが、今では会員数が大幅に増え、全国でさまざまな取り組みを展開するまでに成長しています。
「現在の利用者は、倉敷市近隣の個人や少人数のグループで仕事をしている人と、仕事で倉敷市を訪れる東京、大阪の企業の人が大半」だといいます。
利用は、午前(10:00〜12:00)・午後(13:00〜17:00)の一時利用か、終日利用(10:00〜17:00)。いずれも利用日の1ヵ月前から前日までにHPでの予約が必要です。
また、毎週火曜日には『カフェ分福』がオープン(11:30〜売り切れ次第終了)し、メイン料理を2種類から選べるランチやコーヒーを味わうことができます。このランチ目当てに足を運んでくれるご近所の方も少なくありません。
「中には常連さんもいて、利用者とのつながりがちょっとずつできているのではないかと感じています。そこから新しい発想や取り組みが生まれるよう、私たちもサポートしていくつもりです。ここは、『福を分け合う場所』ですから」と、坂ノ上さんは満面の笑みを浮かべました。