公開日2022/03/28
公開日2022/03/28
「僕たち自身、サイズが合わなくなったりちょっと破れたりして履かなくなったジーンズを何本も持っています。捨てたり、誰かに譲ったり、インターネットのフリーマーケットサイトで販売したりという選択肢には違和感があって、自分にとって気持ちのいい出口を見つけたいと思っていました」。そんな中で知ったのが、倉敷市にゆかりのある倉敷紡績株式会社(以下クラボウ)が生地を裁断する時に出るクズを、再び糸にする技術を導入したというニュース。「履かなくなったジーンズやデニム製品を糸にして新しい製品にできるなら、自分たちにとって気持ちのいい出口ができるし、提供したお客さんにとってサスティナブルの視点で何が起こっているのかわかりやすいプロジェクトになる」。
そんな考えから2021年に始めたプロジェクトが「FUKKOKU」です。当初の回収目標はジーンズ1000本でしたが、回収期限の6月末には全国100カ所以上の回収拠点から約4000本が届きました。「まず、コットン100%、コットン95〜99%、その他に分けて金具などを取り除き、車に積んで愛知県安城市にあるクラボウの工場に持ち込みました」。そこで細かく刻まれ、針状の機具で毛羽立たせて綿(わた)の状態に戻して作った糸は、広島県福山市の工場でデニム生地へと再生され、12月に2000メートルの生地となって帰ってきました。
「ITONAMI」の製品としてパンツとジャケットを発売するほか、回収拠点として協力してくれた企業とのコラボで農作業用のエプロンやコートも作る予定だといいます。「デニムを長く使っていただくため、染め直しやリメイクなどの取り組みをしてきましたが、それは個人の品を個人に返すもの。このプロジェクトはたくさんの人の思いが集まってできたことだし、資源の循環にもなったことから大きなやりがいを感じています」と、ふたりは屈託のない笑顔を見せました。
また、拠点を構える倉敷市児島との連携も重視するふたりは、この3月に5泊6日の「デニムの街を知るワーケーションツアー」を実施。工場見学やワークショップ、オンラインセミナーを通じて、児島の暮らしや産業の魅力を県内外からの参加者に伝えました。 今後もふたりの活動から目が離せません。
「DENIM HOSTEL float」は、「デニムの素材に触れて、デニムの魅力を感じてほしい」という思いから、至るところにデニム生地を用いた客室を用意する”泊まれるデニム屋”がテーマのホステル、「ITONAMI」の直営店&セレクトショップ、宿泊客以外も利用できるカフェから成る複合施設。この春には、「この地の自然を体感してほしい」と宿泊用のグランピングドームとトレーラーハウス、瀬戸内海を一望できるサウナを新設。「わざわざ足を運んで、ゆったりとした自分の時間を大切にすることは、1本のジーンズを長く大切にすることと似ていると思います。ここで過ごす時間が、自分なりの理由でものを選ぶきっかけになれば嬉しいですね」。