公開日2023/11/22
公開日2023/11/22
2022(令和4)年2月、再スタートを切った融民藝店は、倉敷の民藝普及に尽力した倉敷民藝館初代館長の外村吉之介の筆による白い看板も、訪れる人を温かく包み込むような、どこか懐かしい雰囲気も以前のままです。
奥の和室を開放し展示スペースが広くなった店内に並ぶのは、小林さんから受け継いだ作り手によるものが大半です。しかし、「年齢やご家庭などの事情で作るペースが落ちたり、辞められてしまう作り手さんもいる」ため、いまでは個人の作り手ではなく、代表的な焼き物の産地として、小石原焼や瀬戸焼の品々も増やしたとのこと。
「自分の手が届く範囲、頻繁に工房を訪ねることができる作り手さんの品をもっと増やしたいと思っています」と、山本さん。たとえば、『備中和紙』の丹下直樹さんや、『倉敷いぐさ 今吉商店』の今吉正行さん、『石川硝子工藝舎』の石川昌浩さんなど、倉敷市や岡山県内を中心に、中四国で活動する作り手の品々。「倉敷を訪れる方たちにとっても楽しみのひとつになると思うし、長い目で見ると、その土地、そのエリアの品が集まる店が各地にあることが、全国の民藝店の魅力につながるのではないかとも考えています」。
山本さんがもっとも大切にしているのは、「小林さんが50年間ぶれることなく守ってきた根本」だと言います。「小林さんは口癖のように、『どうぞ手に取ってみてください』『使うイメージが沸いたら、ぜひ使ってみてください』と勧められていました。決して『民藝とはこういうもの』と決めつけるような話はせず、日々の暮らしの中で使うことを提案され続けていたのです。僕も、実用性や自然美的なところでお客さまと共感しながらやっていきたいし、そうすることで自然と民藝のよさを伝えることができると思っています」と、真摯な表情で話しました。