公開日2023/11/22
公開日2023/11/22
「品ぞろえを大きく変えるつもりはないけれど、次の時代へのきっかけになるかもしれないと思えることは、作り手さんと一緒に取り組んでいきたい」。
そんな思いを抱く山本さんは、丹下さんが備中和紙で作った張り子のオブジェや、石川さんが手掛けたラテン語の文字が入ったグラスなど、以前は店内で目にすることがなかった品々も並べるようになりました。
それは、「時代が変わり暮らしが変わると、民藝という概念も変わっていくものだと思っています。民藝運動の提唱者のひとりである柳宗悦さんが言い続けた民藝の特性を捉え直しながら、こういう品も民藝なんじゃないかと考え直す場所になっていけたら」という山本さんの思いの表れです。
「民藝が根付いている倉敷・岡山には、長く楽しまれている方がたくさんいらして、『全然使っていないものがあるのだけど、誰かに使ってもらえないか』という相談を受けることもあります」。
山本さんは、そうした人々の「次の世代の人たちが楽しんでくれたら」という思いをくみ取り、店内の一角に小さなコーナーを設けました。そこには「民藝館のような場所に展示されていてもいい程の品」が並ぶこともあるのだとか。
2023(令和5)年10月には白磁を中心に色絵や青磁などに取り組む『祐工窯』(福岡県)の阿部眞士さんの展示会を開催しました。阿部さんは前店主の小林さんが最後に手掛けた展示会の作り手。展示会の形に悩む山本さんに、「悩んでいるよりも、まずはやってみましょう」と鼓舞してくれたのだそう。
小林さんが半世紀をかけて育んできた作り手や使う人とのつながりにも支えられ、『融民藝店』を営む山本さんは、「これからも民藝が暮らしの中にあることでほっとしたり、楽しめる瞬間があることを伝えていきたい」と言葉を締めました。