公開日2024/03/26
公開日2024/03/26
政府の成長戦略にも位置付けられ、新たな交通手段として注目が高まる「空飛ぶクルマ」。電動のため騒音が少なくエコ、垂直離着陸ができるため滑走路も不要、さらにヘリコプターに比べて製造&運用コストが抑えられることが特徴に挙げられます。都市部での次世代モビリティとしての活用はもちろん、過疎地域・山間部・離島などへの交通手段、災害時の物流・交通手段など、多くの社会課題を解決する可能性があることから、今後は世界中に普及するといわれています。「100年に一度の移動革命」に向けて、MASCでも積極的に取り組みを進めています。
MASCは、多くの人に空飛ぶクルマへの理解を深めてもらおうと、2023(令和5)年11月に「くらしき空飛ぶクルマ展示場」を倉敷美観地区周辺にオープンさせました。
ガラス張りの開放的な空間には、中国の開発大手・EHang(イーハン)製の空飛ぶクルマ「EH216」の実物が展示されるほか、VR(仮想現実)ゴーグルをつけて疑似飛行体験が楽しめるフライトシミュレーターも設置。水島と航空宇宙産業とのつながりを伝える、三菱重工業水島航空機製作所で作られていた航空機部品の一部、MASC活動をまとめたパネルなどもあり、幅広い情報発信に努めています。2階は多目的スペースとなっていて、関連した会議やセミナーなどに使用されます。
また展示場では、学生インターンによる子ども向けの体験プログラムも不定期で実施されています。「初回のテーマは、ドローンの組み立て。トイドローンの存在もあってドローンを飛ばすことは身近になりつつありますが、『どうして飛ぶのか』という仕組みについてはまだあまり知られていないので、そこにフォーカスしました」と話すのは、学生インターンの林佳佑さん。プログラムに参加したのは、小学生低学年を中心とした子どもたち。「低学年には少し難しい内容だったかもしれませんが、ドローンを触ったことがある子どもも多く、みんな興味深く楽しんでくれていました」と、学生インターンの石橋雄大さんが当時の様子を話してくれました。「これからは体験プログラムを通じて、幅広い世代にワクワクを提供したい。MASCとしては専門的なアプローチが多いのですが、大学生の立場や目線を活かして、もっとシンプルに人が集まる、にぎやかな場にしていきたいです。次世代の新たな取り組みが生まれるきっかけを、ここから作れたらなと思っています」と、学生インターンの熊沢佑一さんは力強く話してくれました。
現在MASCでは「EH216」を保有するほか、2023(令和5)年10月には国産メーカー・SkyDriveが開発中の空飛ぶクルマ「SD-05」をプレオーダー(2026(令和8)年に納車予定)。空飛ぶクルマの運用実績は数多く、2021(令和3)年5月には国土交通省航空局より日本で初めて屋外での試験飛行が許可され、さらに同年6月には日本初となる屋外無人飛行を岡山県笠岡市で成功させました。その後2022(令和4)年までに、広島県や大分県、兵庫県、香川県などでの無人飛行を次々と実現。2023(令和5)年2月には、国内初となる空飛ぶクルマの屋外有人飛行を大分県大分市で叶えることができました。
国内初の屋外有人飛行に搭乗したのは、当時理事長だった桐野宏司さん。その時の様子を鋤本さんはこう教えてくれました。「騒音がなく滑らかな走行だったと、本人から乗り心地の良さを聞きました。私も別の機会に搭乗したのですが、空飛ぶクルマは観光にとても適していると実感しました。約150mという低い高度から観光地や景勝地を俯瞰で眺められるのがいい。しかもホバリングできるから、じっくりと見られるのも魅力ですね。瀬戸内海はロケーションにも天候にも恵まれた、世界にも類を見ない内海です。瀬戸内エリアにおける空飛ぶクルマ普及の可能性は大いにあります」。
そして2024(令和6)年3月、倉敷市では初となる試験飛行を実施しました。鷲羽山展望台から飛び立ち、瀬戸大橋を背景に周遊する空飛ぶクルマは圧巻で、瀬戸内海に浮かぶ島々への物流・観光・災害対策に向けての実用化がますます期待されます。
最後に、今後の展望をうかがうと、鋤本さんはこう答えてくれました。「空飛ぶクルマは、世界中で開発競争が加速しています。国内においてMASCは、いち早く取り組み、実証実験を積んで、現場での知見を深めてきました。MASCは倉敷発の新事業・新産業の創出に向けて、これからも取り組んでいきます」。
※画像提供:一般社団法人MASC