公開日2016/10/29
公開日2016/10/29
今回の展示のメインとなる作品は、P300号(縦197cm×横291cm )の大作。無為村荘に広がる豊かな自然に触発された風景画のタイトルは、「楽園への追放」。「これまでは好きな人がいて、ずっとラブレターを書いているような感じで、その人との関係性を描いてきました。好きな人がいるだけでよかったし、今いる世界から動きたくもなかった。ずっと変化したくなかったんです。それが、いつも自分のそばにいてくれる不思議な『この子』の存在に気づいて描き続けたら、表現方法も広がって、自由な世界に解き放たれた。『追放された楽園』はとてもきれいだったんです」。
名知さんにとって、「好きな人」は絵を描くための原動力。ここ数年は、その人がいなくなったら絵が描けなくなるのではないか、という漠然とした不安に襲われていたそうです。そんな中で挑んだ今回の「ARKO」では、目の前に広がる倉敷の風景が「絵を描く楽しさ」を思い出させてくれたと言います。
「誰も知り合いのいない倉敷、無為村荘という最高のロケーションで描くうち、『この子』に出会えました。『この子』を見つけて、一緒に過ごすことができて、ドキドキが止まりませんでした。私から生まれる新しい人格を持った、切っても切り離せない存在…。自分が一番信じられる。一番描きたいものが描けたのは今回が初めてです。これからも私とずっと共鳴し続ける『この子』を見てほしいと思いました」。
自画像を通して描き続けてきた「好きな人への想い」、そして今回の制作で模索し見つけ出した「新しい自画像」。名知さんが初めて描く風景画は、描きたいという衝動のままに表現した幻想的な作品に仕上がりました。「今回の作品は、倉敷で出会った美しい風景や人、無為村荘の豊かな自然に心が浄化されて、優しい絵になったと思います。このARKOの滞在制作で、子どもの頃のキラキラした感情を思い出せたし、世界ってこんなにきれいだったんだって気づいたんです」。
名知さんが創作活動を通してずっと探してきた『この子』に会うため、今までの表現方法にとらわれることなく自由に描き続けて完成した今作。『楽園への追放』は2016年11月27日(日)まで大原美術館 分館で開催されているARKO2016にて公開中です。これまで閉じこもっていた殻をやぶり、新しい世界へ踏み出した彼女が表現する「倉敷」と「新しい自画像=『この子』」を、ぜひ間近で体感してください。