特集Vol.16 倉敷銘菓

老舗の味

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塩尻喜月堂

塩羊羹 / 塩尻喜月堂

塩羊羹 / 塩尻喜月堂

「児島ジーンズストリート」に店を構える菓子の老舗

 江戸時代が幕を開けた慶長8年(1603年)、赤穂城主であった池田長政が下津井城主となったことにより、当時先進地とされていた赤穂の製塩技術が児島にもたらされました。それを機に始まったこの地の塩田開発と塩業は、盛衰を経て、根付いていきます。やがて文政12年(1829年)、後に「塩田王」と呼ばれるようになる野﨑武左衛門が大規模な塩田を完成させて以降は、塩業が児島の重要な産業のひとつとなりました。

 塩業とともに児島の近世経済を支えてきたのが、足袋や畳縁、学生服などを作る繊維業。1965年に日本初となる国産ジーンズを誕生させ、「国産ジーンズ発祥の地」として、さまざまなメーカーがジーンズを生産しています。ジーンズメーカーのショップが連なる「児島ジーンズストリート」には、国内外から多くの観光客が訪れるように。そんな「児島ジーンズストリート」の一角にあるのが、明治43年創業の菓子店『塩尻喜月堂』です。「野﨑家が塩業で栄え、児島の町がどんどん発展していた明治時代。倉敷市真備町箭田で農家をしていた祖父の塩尻嘉右衛門が、人とものが集まる児島に夢を求めて移り住みました。そうして開業した菓子店が、当店の始まりなのです」と、三代目店主の一喜さんは話します。

歴史ある児島産の塩を用いた、辛党にもおすすめのひと品

 現在は「塩羊羹と塩まんじゅう専門店」の看板を掲げる『塩尻喜月堂』ですが、創業当初はあめやせんべいなどさまざまな菓子を製造・販売していました。しかし次第に、「児島の主要産物である塩を使った菓子を作りたい」と考えるようになった塩尻嘉右衛門は「塩羊羹」を考案したのです。材料は国産小豆と砂糖、野﨑の塩、寒天、水飴。保存料などの添加物はいっさい使いません。

 瀬戸内の海水から製造された塩がほどよく効いたこの羊羹は、口当たりのよさと、さっぱりとしたあと口が身上で、お客の中には「ワインに合う」と買い求める辛党の人もいるそうです。
 自家製の餡にほかの材料を加え、型に流して固めるというシンプルな製法ゆえに、材料の配分や作業のひとつひとつが味わいを大きく左右します。昭和44年に工場は機械化されましたが、味を決めるのはやはり長年の経験。「季節による違いはもちろん、同じ時期でも昔とは気温や湿度が異なります。祖父から伝わる味に仕上げるためには、餡の詰め具合などの微妙な調整が必要なのです」。
 職人技に支えられた「塩羊羹」は、冷やして食べるとよりあっさりと味わえます。

伝統の味を通じて、児島の歴史を人々の記憶に残したい

 「名字に『塩』の文字が入っているのも、何かの縁。代々受け継ぐ塩のお菓子の味を守りつつ、過渡期にある町の発展の一助となる新たな取り組みもしていきたい」。そう話すのは、四代目の公明さん。代替わりとともに併設の喫茶店のマスターとなった一喜さんをはじめとする家族みんなで相談し、知恵を出しあって、パッケージに地元産のジーンズ生地を用いた食べきりサイズの塩羊羹を発売したり、店頭にデニム雑貨を並べたりとさまざまな工夫をしています。

 「今や特産品となったジーンズを商品やディスプレイに取り入れることで、訪れるジーンズファンにも楽しんでもらいたい。塩田が広がっていた昔の風景を取り戻すことはできないけれど、新たな取り組みをきっかけに当店のお菓子を味わっていただくことで、塩で栄えた町という児島の歴史を記憶に残してもらえたら」。公明さんの言葉からは、この地への愛情が伝わってきます。

綿・塩・イカナゴの「三白」で栄えた、児島

 児島はもともと海に浮かぶ島で、「古事記」には日本の九番目の島として誕生したと記されています。現在見られるような陸続きの平野となったのは、戦国時代の終わり頃から明治時代にかけての干拓と新田開発の成果。そんな児島の産業を象徴するのが、綿やそれを用いた繊維産業、イカナゴ漁に代表される漁業、江戸時代に端を発する塩業を指す「児島三白」です。

塩尻喜月堂しおじりきげつどう

  • 所在地 岡山県倉敷市児島味野2-3-19
  • お問合せ Tel :086-472-2535
  • 営業時間 9:00~17:00
  • 定休日 月曜日
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