公開日2018/02/14
キャンドルのある空間と時間、
心の燈火を創造したい
- 倉敷製蠟(くらしきせいろう)運営会社:ペガサスキャンドル株式会社
公開日2018/02/14
キャンドルのある空間と時間、
心の燈火を創造したい
創業の地・倉敷で一つ一つ真心を込めてキャンドルを作り続ける老舗メーカー。
その伝統の技に現代的な感性を融合させて生み出した、これまでにないキャンドルが、
今、国内はもちろん海外からも注目されています。
江戸時代に幕府の直轄地、いわゆる天領として栄え、さまざまな物資が集まっていた倉敷では、恵まれた資源を生かした種々の工芸品が作られていました。そして大正時代末期からは、「民藝運動」の広まりとともに、「用の美」をたたえた多彩な民藝品も生み出されてきました。
そんな手仕事のまち・倉敷で、2017年、この地の名を冠したキャンドルブランド「倉敷製蠟」が誕生しました。「倉敷製蠟」は、「グッドデザイン特別賞[ものづくり]」や「DESIGN TOKYO大賞 2017」のグランプリを受賞した「CARD CANDLE」をはじめとする、4種のキャンドルとマッチのラインナップからなります。
このブランドを世に送り出したのは、1934年(昭和9年)創業の、国内屈指のキャンドルメーカーとして知られるペガサスキャンドル株式会社。
「キャンドルのある生活をひとりでも多くの人に」。そんな熱い思いを抱くペガサスキャンドルの井上隆夫社長や社員たちが、キャンドルのよさを伝える道を探っていた2015年のこと。井上社長は、同じく倉敷の企業であるカモ井加工紙株式会社の鴨井尚志社長から、同社のマスキングテープを「mt」の名で全国に知らしめたアートディレクター・居山浩二さんを紹介されます。
そして2年の時をかけ、培ってきたキャンドル作りの技術に、居山さんの卓抜した感性を融合させ、「倉敷製蠟」を完成させたのです。
グッドデザイン賞で「素材、加工、香料の吟味・検証を重ねて作り上げた、最高品質のキャンドル」と評価された「倉敷製蠟」の「CARD CANDLE」。厚さわずか3mmの板ガムを思わせる、持ち運びしやすいコンパクトなフォルムで、日々の生活のさまざまな場所で気軽に楽しむことができます。
開発に深く関わった倉敷工場長の園山真司さんは、「エッジをきちんと出しながら、どこまで薄くできるかが課題でした」と当時を振り返ります。
主な原料として選んだのは、ススが出にくく、環境と人に優しい植物由来のパームワックス。デザインが蝋が垂れやすい形状だったため、品質に厳しいブライダル業界のキャンドル作りで培ってきた技術を基に、ワックスの配合を追求。エッジをシャープに仕上げるために、製法も試行錯誤を重ねました。また、キャンドルの重要な要素である香りも、現代の生活シーンにマッチした3種類を新たに用意。こうして、蝋が垂れることなく最後まで美しい炎と香りを楽しめる「倉敷製蠟」が創り上げられたのです。
完成した「CARD CANDLE」の厚さは、芯の太さとほぼ同じ。そのため、芯をワックス内に収める作業は機械では難しく、一つ一つ人の手で作られています。小振りな型に芯をセットし、やかんを使って溶かしたワックスを流し込み、固まったところで型から外して、形を整え…。
どこか懐かしさを感じさせる手仕事が繰り返されているのは、倉敷工場の一角です。その敷地内には、新たなキャンドルの商品開発から商品化に向けて試作を重ねる工房や、炎の大きさの決め手となる芯を製作する工場があり、品質をチェックする工程までを一貫して行っています。
さらに、地元・倉敷に貢献したいという思いから、キャンドルの保管・発送を担う物流センターも倉敷市内に設けているのだそう。
板ガムのようなカード型キャンドルは、付属の真鍮のスタンドに立てて使います。香りは、優雅でフローラルな「Fresh Floral」など3種。
木製のスタンドに立てて楽しむ、試験管入りのキャンドル。爽やかで知的な「Fresh Green」など香りの異なる3本セットのほか、単品もあります。
ベーシックなグラス入りキャンドル。ススが少なく炎のゆらぎをクリアに楽しめるので、ゆったりとキャンドルに癒されたい時に最適です。
粒チョコレートを模したキャンドルは、トレーに入ったまま炎を灯して。無香なのでさまざまなシチュエーションで楽しめます。
長い持ち手が、特別なひとときを感じさせるマッチ。試験管キャンドルを灯す時に便利です。
1934年創業。高い開発力と技術力で、時代のニーズに応え続ける日本屈指のキャンドルメーカー。ウエディング用キャンドルのシェア約60%を誇る。キャンドルを通じて心の燈火を創造することを目指し、多彩なキャンドルとキャンドル文化を発信している。
1950年代から60年代にかけては輸出用キャンドルの製造が主だったペガサスキャンドルですが、1970年代のオイルショックをきっかけにブライダル業界へと進出しました。「カバンにキャンドルサービス用の品々を詰めて、東京のホテルなどを回ったと聞いています」と、園山工場長。やがてその品質が認められた同社のキャンドルは、全国で数多くのウエディングシーンを彩るようになります。
人生最良の日に花を添えるキャンドルを提供する中で、商品を届けるだけでなく、「キャンドルのある空間と時間、心の燈火の創造」を目指し、キャンドル文化の普及にも力を注ぐようになります。たとえば、2008年から国指定重要文化財・大橋家住宅などで毎年開催しているのは、倉敷ゆかりのガラス工芸家によるキャンドルスタンドを集めた「倉敷とあかりとガラスの作家たち」。古民家のゆかしい空間に、ゆらめく炎が灯ります。
2014年には「キャンドル卓 渡邉邸」をオープン。大正時代の蔵に、キャンドルが灯る空間で食事やお酒を楽しめるレストランと、バリエーション豊かなキャンドルに出合えるショップを併設しています。
そうして日々の暮らしを豊かにするキャンドルの魅力を発信する中で、より使いやすく、スタイリッシュなキャンドルをと開発したのが「倉敷製蠟」です。発売以来、海外からの問い合わせも多いこの品を通して、倉敷の名を世界に発信できればと、ペガサスキャンドルは切に願っています。
倉敷市には、「フィールドオブクラフト倉敷」や「クラシキ クラフトワークビレッジ」といった手仕事の魅力を発信するイベントや施設が数多くあり、地元クラフト作家の作品を展示する個性的なギャラリーも点在しています。その背景にあるのは、古くから暮らしの中で連綿と受け継がれてきた「ものづくりの精神」と、大正時代末期に始まった「民藝運動」。大原美術館の創設者でもある実業家の大原孫三郎が倉敷に招いた外村吉之介によって、「用」を追求する中で自然と生まれる簡素な「美」をたたえた「民藝」という考えが広まりました。そうして生み出された民藝品や工芸品はもちろん、倉敷で作られるさまざまな製品の中には、手仕事ならではの温かさと「用の美」を備えたものが数多くあるのです。