公開日2019/09/4
公開日2019/09/4
近くの岩黒島で採取した粘土で陶芸を体験したり、島に滞在する映像作家の制作風景を見学したり、地元女性直伝のレシピで作った下津井産ワカメの料理を味わったり…。「旧松島分校」ではこれまで、ここならではの楽しみを体感できるイベントを開催してきました。
この7月には、写真家の加藤晋平さんによる写真のワークショップなどを行う、3日連続の「松島オープンスタジオ」を開催。取材に訪れた3日目のテーマは「のんびりする日」。子どもから大人まで約20人が集結し、穏やかな海で泳いだり、防波堤で釣り糸を垂らしたり、展示ホールで投影される写真家の作品を鑑賞したりと、思い思いに「松島時間」を楽しんでいました。昼時には、岡山県産野菜を用いたカレーや具だくさんの冷や麦などの振る舞いも。ちなみに、料理を盛った器は、かつてこの分校で使用されていた給食用の食器でした。
「松島までの船旅は、下津井田之浦港からは約5分、児島観光港からなら約15分。『すごく近いのに贅沢な時間を過ごせました』と、皆さんに喜んでいただけました」。
そう振り返る片山さんをはじめ、「一般社団法人松島分校美術館」のスタッフが胸に抱くのは、「文化・芸術を通じて、下津井のまちづくりに寄与したい」という強い思い。その実現を目指し、今日も「旧松島分校」の新たな活用法を模索し続けています。
「松島での活動は2人の島民や地元の皆さん、近隣にある短大の先生方などが、強力に支援してくださっているからこそ可能なんです」と片山さんは話します。
取材当日も、そのひとりである松島に住むサガミさんが「せっかくだから純友神社まで行ってみては」と、案内を買って出てくれました。後についてたどったのは、うっそうと茂る竹林のなかに続く小道。聞くと、手入れをする人がほかにいないため、自ら竹を伐り、斜面に延びる小道を整えているのだそう。
やがて到着した神社はこぢんまりとしていますが、本殿や拝殿、石灯籠、手水も設けられ、かつて多くの人々の信仰を集めていたことがうかがえます。
サガミさんと会話しながらの散策は、神社のある山頂から見下ろすパノラマのような海景色以上に、来訪者へのもてなしの心が印象に残るひと時となりました。