公開日2021/03/25
公開日2021/03/25
真備竹林麦酒醸造所は2023年3月末をもって閉所しました。
今後はまちの復興の役に立てるよう、新醸造所開設に向けて取り組んでいくとのことです。
※「真備竹林麦酒」の商標と製品は、別会社に引き継がれます。
復興に向けて一歩また一歩と歩みを進めていた2020年初夏。多田さんは、岡山市の「吉備土手下麦酒醸造所」が苦しんでいることを知りました。「起業以前からお世話になり、豪雨災害の時も一番に駆けつけてくれた永原さんを支えたい」との思いから、多田さんは「まび 雨ニモマケズ ~コロナにもマケズ~支援プロジェクト」を始動。「吉備土手下麦酒醸造所」のビールを買い受けて、自分たちの醸造所で瓶詰めし、シンガーソングライターの沢知恵さんのCD「雨ニモマケズ」とセットで販売したのです。翌年1月には、用意していた200セットを完売し、プロジェクトはいったん終了しました。
「僕たちの周りには、僕たちを応援し、助けてくれる人がたくさんいました。だから、僕たちが今ある『おかげ』を当たり前に返していくだけ。『真備竹林麦酒醸造所』もコロナ禍の影響を受けていますが、夢はいっぱいあるんです」と多田さん。そのひとつが、水害で休止していた、完全倉敷産地ビール「くらしき物語」を造るプロジェクトの再始動です。
「被災した2018年の秋に、町内の服部営農組合の皆さんが、多田さん、麦を植えよう!と、『岡山大学資源植物科学研究所』の開発したビール用大麦を植えてくださり、翌年の春には立派な大麦を5トンも収穫してくれました。あいにくその年は大麦を麦芽にする機械が水没でだめになっていたため、そこだけは大手ビールメーカーの工場に依頼しました。新しい機械もイギリスの会社に発注したものの、コロナ禍で製造がストップし、いつ届くか分からない状況です」。そんな中、それでも前を向こうとしています。
「真備は昔から、時に氾濫する小田川と共に畑を作り、暮らしてきたという歴史があります。そういった、『川と暮らす』物語を真備の復興に役立てたい、『くらしき物語』にはそんな想いが込められているんです。まだまだやらなければならないことがたくさんあるけど、倉敷の皆さんが思いを込めて育てた大麦でビールを造ることで、この町を元気にしていけたらうれしいですね」。そう話す多田さんは、柔和な笑顔を浮かべました。