公開日2022/03/9
公開日2022/03/9
1993(平成5)年、「倉敷市大山名人記念館」の設立と時を同じくして、女流タイトル戦の「大山名人杯倉敷藤花戦」、1995(平成7)年には「小学生王将戦」(現在は、各県の代表が集う「大山名人杯争奪全国小学生倉敷王将戦」)の開催が始まりました。「全国小学生倉敷王将戦」には幼い日の藤井聡太竜王も参戦。小学3年生の時に低学年の部で優勝を果たし、「新進棋士奨励会」に入るきっかけになったといいます。また地方自治体がタイトル戦の主催となる例は全国的にも他に例がなく、将棋のまち・倉敷たるゆえんを感じさせます。この2つの大会の設立に尽力した北村さんは、「大山名人によって築かれた将棋のまちの機運を高めたい、その思いが大会設立の原動力でした」と思いを話してくれました。
倉敷では将棋大会だけでなく、将棋教室も盛んです。「倉敷市大山名人記念館」や「真備こども将棋教室」などでは、多くの人が将棋に親しんでいます。取材で訪れた「水島子ども将棋教室」は、小・中学・高校生を対象にした教室を定期的に開催。そこには、「大山名人杯争奪全国小学生倉敷王将戦」で岡山県代表に選ばれた小学生や、女流棋士を目指す女子高校生など、実力者もたくさんいます。「倉敷市大山名人記念館の教室には、幼い頃、プロ棋士・菅井竜也八段(以降、菅井八段)も通っていましたよ」と北村さん。「プロとして活躍する菅井君から、ある日『自分も記念館で教室を開きたい』と申し出がありましてね。自身を育ててくれた地域に恩返ししたい、その思いからだったのでしょう。将棋が深く根付く文化・土壌があることは、とても大きな財産です」。
将棋教室の生徒数に比例して日本将棋連盟に所属する指導員も多く、その数は中国・四国地方ではトップクラス。2021(令和3)年には北村さんが、日本将棋連盟から公認指導員の最上位資格「棋道正師範」を受嘱。「棋道正師範」が与えられるのは、受賞条件に加え顕著な活動実績がある人に限られ、全国にわずか4人だけ。まさに普及を極めた証ともいえる資格について尋ねると、「将棋の普及に努めた大山名人の意思の遺産を引き継いだだけです」と謙虚に笑顔で答えてくれました。