倉敷美観地区に佇む昭和初期の町家を改装した『JAZZ喫茶アヴェニュウ(以下アヴェニュウ)』は、バニーガールの看板やジャズを演奏するプラモデルが並ぶショーウインドーが目印。レトロな趣が漂う店内で、昼は昭和の喫茶店の定番メニューを味わえ、夜はジャズライブをリーズナブルに楽しめます。





「創業当時は、ジャズは都会では知られていましたが、地方では知らない人が多かった時代。そのため大好きなジャズを倉敷に広めたいと、父は周囲の反対を押し切って公務員を退職し、1968年に倉敷駅前の大通り沿いに『アヴェニュウ』をオープンしました」と現店主の松本琢真さん。


当時、ジャズを聴くために必要なレコードやオーディオ機器はとても高価でした。そこで誰もがジャズを楽しめる場所として、1960年代に日本全国に広がったのがジャズ喫茶。この店は倉敷のジャズ喫茶ブーム黎明期から続く店です。
現在の場所に移転したのは1984年。駅前の再開発を機に、「ライブができる場所をつくりたい」という思いを叶えるため、その広さを確保できるこの町家を選んだといいます。



松本さんは、父・勝也さんから当店の運営を引き継いだ2018年にメニューを一新。フードをピザやパスタ、ピラフなど数種に絞るとともに、クリームソーダに力を入れ始めました。若い女性スタッフの発想力に助けられ、1種から3種、16種へと段階的に増やし、現在のバリエーションは常時32種!ライブ時のみ登場するアーティストとのコラボソーダまで含めると約50種というから驚きです。
なかでも人気を呼んでいるのが、テレビ番組の取材で訪れた倉敷市出身のフィギュアスケーター・高橋大輔さんから「僕のイメージで」と請われ、即興で生み出した「ぱちぱちホワイトリンク」(写真右)。LEDコースターの光に美しく照らされるこの一杯を目指し、県内外から多くのファンが訪れているといいます。
「都会から来たミュージシャンから『クリームソーダ屋さんがジャズライブをやっているんですね』と言われることもありますよ」。松本さんがそう笑うほど、クリームソーダは看板メニューとして定着しているのです。


「以前より広くなったとはいえ、この町家はライブ会場としては狭く、天井も低い。木造ゆえの建物のゆるさというか、隙間が多いので、音色がふくよかに響くんです」。そう話す松本さんは、毎夜、ジャズライブを開催。プレイヤーは日毎に異なり、月に1、2回は全国的に活躍するプロも登場しますが、地元のアマチュアとプロが中心です。





「ニューヨークジャズやヨーロッパジャズがあり、国内でジャズといえば東京、大阪。でもご当地ジャズがあってもおかしくない」。そう考える松本さんは、「倉敷ジャズ」ともいえる地元プレイヤーのオリジナル曲や演奏を世界に向けてネット配信。ジャズ喫茶らしからぬ高画質・高音質にこだわった配信の視聴をきっかけに、チリやドイツ、イギリスなど世界各国から多くの人が訪れるようになりました。加えて、プレイヤーの演奏技術向上やオリジナル曲増加など、思わぬ嬉しい効果も現れているそうです。




それでも、「あくまでもその人が人生でジャズを聴く時間を1分1秒でも長くするのが目的」と松本さん。まずは気軽にクリームソーダを味わいつつ、BGMのジャズにしばし耳を傾けてみませんか。


2009年のスタート以来、毎年11月上旬頃に開催されている「倉敷ジャズストリート」。松本さんも深く関わるこのイベントでは、2日間にわたって、町家や蔵、寺の本堂、神社など、大小さまざまな会場で多数のバンドが次々とジャズを奏で、倉敷美観地区一帯がジャズ一色に染まります。出演者は地元倉敷はもちろん全国各地から集い、来場者はジャズファンや観光客など約3万人。今では倉敷のジャズの祭典として名を馳せています。



| 所在地 | 倉敷市本町11-30 |
|---|---|
| お問合せ | 086-424-8043 |
| 営業時間 | 12:00〜22:00 ※カフェは〜17:00 |
| 定休日 | 月曜(祝日の場合は営業) |